JOURNAL

長田区の概念にとらわれないダイバーシティの形/INTERVIEW

長田区の概念にとらわれないダイバーシティの形/INTERVIEW

わたしたちは、オールインクルーシブな社会の実現を目指すにあたり、国内外さまざまな場所を訪れてきました。そんな中で出会った兵庫県神戸市長田区の人々。長田区には、多様な人が集まり、国籍・年齢・障がい・言語などの様々な違いを受け入れ、楽しむ文化があることを知り、まさにオールインクルーシブな社会を体現している町のようだと感じました。 今回は、そんな長田区で活動をされている皆さんにインタビューをさせていただきました。お話を伺ったのは、長田区役所地域協働課の渡辺祥弘さんと上達弘明さん、そして関東から長田区のダイバーシティの形に魅了され、移住された保育士起業家 / 合同会社こどもみらい探求社の小笠原舞さんです。 (左から上達さん、小笠原さん、渡辺さん) 企業や組織のような「同じパーパス」を持った人々の集まりではないからこそ、強制することをせず、「多様な人々が暮らしやすい町を実現するために大切なこと」について知っていただければと思います。 多様性が注目された時代だからではなく、あくまで自然体で助け合い、尊重し合ってきた ー長田区の魅力はどのようなところにあると思いますか? 小笠原さん:暮らしの中で当たり前に「助け合う文化」があることだと思います。その前提として、障がいの有無や年齢などの違いにフォーカスするのではなく、そもそもみんな違うという価値観があるように感じます。 本当はどこでもそうですが、長田の町は多様な人が自分たちのペースで生活していることをよく目にするの  で、その人に聞いてサポートが必要であれば協力する。それは「多様性」という言葉があるから、または言われたからやるというわけではなく、日常的に染みついているんだと思います。 これがとても大事なポイントな気がしていて...。もちろん「多様性」という言葉から多様な人が暮らしやすいまちづくりを意識することも大事だと思いますが、作ろうとするのではなく自然に助け合う意識が残っているのが長田区の魅力だと感じます。 渡辺さん:長田区の人は、「その人がよければそれでいいんじゃないかな」という考え方と「その人が困っているのであれば力になりたいな」という考え方を持っている人が多いのだと思います。   ー長田区について調べてみると、行政や市民、お隣さん同士の距離の近さが魅力の1つだと感じました。そのような距離感を実現できている秘訣は何でしょうか。 渡辺さん: 1つ目は年齢、性別、職業、国籍などの肩書きではなく1人の人間、友達として接する人が多いことです。僕自身、仕事上の立場としては区の職員であるけれど、だからといって特別扱いされるわけではなく距離を置かれるわけでもないんですよね。気軽に相談してくれたりイベントに呼んでくれたり、フラットに接してくれるのがとても居心地がいいです。 2つ目は阪神・淡路大震災の影響です。長田区はこの震災により甚大な被害を受けました。そこでお互いに助け合い、なんとか乗り越えてきた経験が残っているからこそ、人とのつながりを大切にする人が非常に多いと思います。 3つ目は下町であること。これは長田区だけではなくほかの地域にもある部分だと思いますが、長屋やベンチ、路地がたくさんあったりといった下町ならではの構造によって、自然と人と人との距離が近づいてコミュニティができるのだと思います。 上達さん:町の構造に関して言うと、公共的なものだけでなく銭湯の待合室や喫茶店、粉もん屋 などの物理的に距離が近くなる場所が町の社交場としてあり、そこで立場を超えて話をするということがよく見受けられます。 小笠原さん:たしかに、社交場は余談や雑談が自然と生まれやすく、関係ができやすいと思います。そのような余白がいたるところに残っていることも町全体で共助のコミュニティをつくることができるのかもしれないなと感じています。 私は他者を思いやる気持ちによってダイバーシティが成り立っている長田区の構造が面白いと思って移住してきました。しかし、それは裏を返すと他者を思いやる気持ちがなくなると長田区の自然と形成されているダイバーシティの形や文化がなくなってしまうと思っています。 だからこそ、介護や教育、就労支援、芸術の分野で活動する私を含めた実践者と、渡辺さんと上達さんを含めた行政として町全体を見て環境を整える役割をする人たちが1つのチームとして連携していく必要があると感じています。 違いを面白がったり、お互いに尊重したり、行政と住民がフラットに相談しあったり、コラボしたりと、そんな関わり方を通して町の文化や価値観を守っています。 「自分」の概念を広くすることから生まれる助け合い 渡辺さん:あとは、長田区に住んでいて感じることとして「自分という概念が広い」ことが挙げられると思います。 例えば、家族や友達、同僚を含めて自分と考えたりといった意識が長田区の人々にあるように感じます。損得を考えて行動するのではなく、みんな友達だから友達は幸せでいてほしいというような感覚です。 上達さん:活動する人も、まだ見ぬ誰かのためというよりも身の回りにいる人が困っていて、その人のために何ができるかを考え、行動する人が多いように感じます。それが渡辺さんの言う「自分という概念が広い」ことでもある と思います。...

長田区の概念にとらわれないダイバーシティの形/INTERVIEW

わたしたちは、オールインクルーシブな社会の実現を目指すにあたり、国内外さまざまな場所を訪れてきました。そんな中で出会った兵庫県神戸市長田区の人々。長田区には、多様な人が集まり、国籍・年齢・障がい・言語などの様々な違いを受け入れ、楽しむ文化があることを知り、まさにオールインクルーシブな社会を体現している町のようだと感じました。 今回は、そんな長田区で活動をされている皆さんにインタビューをさせていただきました。お話を伺ったのは、長田区役所地域協働課の渡辺祥弘さんと上達弘明さん、そして関東から長田区のダイバーシティの形に魅了され、移住された保育士起業家 / 合同会社こどもみらい探求社の小笠原舞さんです。 (左から上達さん、小笠原さん、渡辺さん) 企業や組織のような「同じパーパス」を持った人々の集まりではないからこそ、強制することをせず、「多様な人々が暮らしやすい町を実現するために大切なこと」について知っていただければと思います。 多様性が注目された時代だからではなく、あくまで自然体で助け合い、尊重し合ってきた ー長田区の魅力はどのようなところにあると思いますか? 小笠原さん:暮らしの中で当たり前に「助け合う文化」があることだと思います。その前提として、障がいの有無や年齢などの違いにフォーカスするのではなく、そもそもみんな違うという価値観があるように感じます。 本当はどこでもそうですが、長田の町は多様な人が自分たちのペースで生活していることをよく目にするの  で、その人に聞いてサポートが必要であれば協力する。それは「多様性」という言葉があるから、または言われたからやるというわけではなく、日常的に染みついているんだと思います。 これがとても大事なポイントな気がしていて...。もちろん「多様性」という言葉から多様な人が暮らしやすいまちづくりを意識することも大事だと思いますが、作ろうとするのではなく自然に助け合う意識が残っているのが長田区の魅力だと感じます。 渡辺さん:長田区の人は、「その人がよければそれでいいんじゃないかな」という考え方と「その人が困っているのであれば力になりたいな」という考え方を持っている人が多いのだと思います。   ー長田区について調べてみると、行政や市民、お隣さん同士の距離の近さが魅力の1つだと感じました。そのような距離感を実現できている秘訣は何でしょうか。 渡辺さん: 1つ目は年齢、性別、職業、国籍などの肩書きではなく1人の人間、友達として接する人が多いことです。僕自身、仕事上の立場としては区の職員であるけれど、だからといって特別扱いされるわけではなく距離を置かれるわけでもないんですよね。気軽に相談してくれたりイベントに呼んでくれたり、フラットに接してくれるのがとても居心地がいいです。 2つ目は阪神・淡路大震災の影響です。長田区はこの震災により甚大な被害を受けました。そこでお互いに助け合い、なんとか乗り越えてきた経験が残っているからこそ、人とのつながりを大切にする人が非常に多いと思います。 3つ目は下町であること。これは長田区だけではなくほかの地域にもある部分だと思いますが、長屋やベンチ、路地がたくさんあったりといった下町ならではの構造によって、自然と人と人との距離が近づいてコミュニティができるのだと思います。 上達さん:町の構造に関して言うと、公共的なものだけでなく銭湯の待合室や喫茶店、粉もん屋 などの物理的に距離が近くなる場所が町の社交場としてあり、そこで立場を超えて話をするということがよく見受けられます。 小笠原さん:たしかに、社交場は余談や雑談が自然と生まれやすく、関係ができやすいと思います。そのような余白がいたるところに残っていることも町全体で共助のコミュニティをつくることができるのかもしれないなと感じています。 私は他者を思いやる気持ちによってダイバーシティが成り立っている長田区の構造が面白いと思って移住してきました。しかし、それは裏を返すと他者を思いやる気持ちがなくなると長田区の自然と形成されているダイバーシティの形や文化がなくなってしまうと思っています。 だからこそ、介護や教育、就労支援、芸術の分野で活動する私を含めた実践者と、渡辺さんと上達さんを含めた行政として町全体を見て環境を整える役割をする人たちが1つのチームとして連携していく必要があると感じています。 違いを面白がったり、お互いに尊重したり、行政と住民がフラットに相談しあったり、コラボしたりと、そんな関わり方を通して町の文化や価値観を守っています。 「自分」の概念を広くすることから生まれる助け合い 渡辺さん:あとは、長田区に住んでいて感じることとして「自分という概念が広い」ことが挙げられると思います。 例えば、家族や友達、同僚を含めて自分と考えたりといった意識が長田区の人々にあるように感じます。損得を考えて行動するのではなく、みんな友達だから友達は幸せでいてほしいというような感覚です。 上達さん:活動する人も、まだ見ぬ誰かのためというよりも身の回りにいる人が困っていて、その人のために何ができるかを考え、行動する人が多いように感じます。それが渡辺さんの言う「自分という概念が広い」ことでもある と思います。...

「対話」から生まれた新しい価値/INTERVIEW

「対話」から生まれた新しい価値/INTERVIEW

わたしたちが目指す「多様な人も、動植物も、地球環境も、誰もどれも取り残さないオールインクルーシブな社会」の実現は、SOLITだけの力で、手が届くものではありません。オールインクルーシブな社会の考え方に共感をしてくれる個人の存在、家庭の存在、企業の存在、町の存在などがいて、みんながそれぞれのオールインクルーシブに向かって取り組む必要があります。 そんなオールインクルーシブな社会に共感し、そして会社として具体的な取り組みを行っている、コクヨ株式会社(以下、コクヨ社)。今回は、コクヨ社でオールインクルーシブな取り組みの実践者として働く、井田幸男さん(CSV本部サステナビリティ推進室 理事)、林友彦さん(ワークプレイス事業本部ものづくり本部シーティング開発部大阪グループ・社会のWell-beingタスクフォース兼務)、江崎舞さん(働き方改革室・社会のWell-beingタスクフォース兼務)にインタビューをしました。 コクヨでは、一人ひとりが多様な人の違いを受け入れ、尊重することで、個人が自分らしく能力が発揮できる環境を整えるというD&I(Diversity&Inclusion)の取り組みに加え、それによって生まれた価値を、より多くの人に届けるという「D&I&I(Diversity&Inclusion&Innovation)」という取り組みも行っています。 今回のJOURNALで、企業が今取り組むべき課題はどのようなものなのか、D&Iに全社で取り組む意思決定は社内外にどのような影響をもたらすのかなどについて知っていただけると嬉しいです。   「新しい価値」への期待から生まれたコクヨのD&I&I(Innovation) ー部署やチームごとの取り組みではなく、全社の意思決定としてコクヨがD&Iの推進を決めた理由を教えていただけますか? 井田さん:最初のきっかけは強烈な課題意識でした。例えば、障がいのある方への企業の取り組みでいうと、障害者雇用促進法における法定雇用率の基準を満たしているからD&Iに取り組んでいるという考え方もあると思います。しかし、私たちは「法定雇用率を守るだけで果たして多様性を包括できているのか」という課題意識のもと、議論が始まったのが意思決定の前提としてあります。 議論をするうえで、2つの問題提起をしました。 1つ目は、「D&Iの取り組みは障がいがある人だけが対象なのか」ということです。例えば、セクシュアルマイノリティや高齢者、ヤングケアラーなど多様性への取り組みの対象としてもっと視野を広げるべきなのではないかということを考えました。 2つ目は、「インクルージョンしているって何だろう」ということです。例えば、特例子会社によって障がいがある人を雇用することはできているけれど、コクヨで働く社員がそこで働く方たちと対話を重ねて、一緒に仕事をすることはできていないという状況がありました。そのやり方の延長線上では、これから先、通用しないのではないかと考えました。   ー議論の中で、どのように意思決定をしたのでしょうか? 井田さん:意思決定においては2つのポイントがあります。 1つ目は、経営における課題としてとらえたことです。人事という1つの部署や特例子会社だけが取り組むべき課題であるのか、ということを考えたとき、経営として全社で取り組む課題だという結論に至りました。 2つ目は、なぜ全社の意思決定としたのかという部分にもつながりますが、コクヨが今後成長したい方向性とD&Iの方向性が一致したことが挙げられます。例えば、段差のあるオフィスや右利きの人用に作られているはさみなどによって起こる困りごとを、当事者と対話を重ねることで解決できるとすれば、そのニーズは必ずあるはずで、コクヨにとっても新しい価値になるのではないかと考えました。 ーリターンのスピード感が求められる大企業にとってD&Iに取り組むことは難しいことだと思いますが、大企業としてD&Iに取り組むことへの価値はどのようにとらえているのでしょうか? 井田さん:すごく簡単に言うと、イノベイティブということだと思います。リターンという観点においては、困りごとを解決することによって社会システムが良くなると、それに対してお金を払ってでも取り組もうという考えになると思うので、経済合理性の面ではリターンのあることだととらえています。 また、世の中に対する価値観のセットという点においても重要なことだと思っています。社会システムが「障がい」を作り出しているととらえ、それを無くすための事業活動をするという新たな価値観を示すことができると考えています。 ー「イノベイティブ」という言葉がありましたが、それがコクヨがかかげているD&I&I(Innovation)につながっているということなのでしょうか? 井田さん:そうですね。コクヨの考えるD&Iの形は、社内の困っている人にむけて、オフィスの段差や家具、文房具などの在り方を考え、試してみて一緒に働く環境を整えることです。そして、コクヨの考えるD&I&I(Innovation)は、社内で試したものを商品化して販売することによって社内にとどまらず、世の中で困っているより多くの人に価値を届けられるということです。 インクルーシブデザインに期待をこめて ーこれまでの具体的なD&I&Iの取り組みを教えていただけますか。 井田さん:私は主にD&Iの部分を担っています。D&Iにおける具体的な取り組みは、2030年チャレンジ目標として「インクルーシブデザインを経た新シリーズ上市率を50%以上にする」とKPIを設定するなど、全社としての目標を掲げたことが大きいと思います。一般的に、企業は来年度の売り上げ目標を提示し、株価が上がったり下がったりするという構造なのですが、このような社会的な価値に対しても、会社として目標を設定しました。 これは、外部に対してとは別に内部に対しても大きな影響があったと思います。例えば、商品の開発においては、開発プロセスにインクルーシブデザインを加えるとなると、単純に仕事が増え、負担やコストがかかってしまう。しかし、そこに全社の目標があり、その対価としてのサラリーがしっかりあることで動きやすくなったと考えています。 林さん:私はオフィス家具の開発を通じて、主に「&I(Innovation)」の部分を担っています。「&I(Innovation)」の突破口としてオフィス家具の開発にインクルーシブデザインを取り入れているのですが、メーカー部門だけでインクルーシブデザインに対するアクションを起こせるかというとやはり難しい部分があると思うんですよね。 マスのターゲットに対して平均的なモノをつくり、より多くの利益をあげることをどうしても考えてしまうので。ただ、井田も言っていたように、全社のKPIがあることによって、勇気を持って取り組めることにつながります。慈善事業ではなく、しっかりとリターンを考えて取り組むことが、私たちのチームを後押ししてくれました。 ー数ある多様性へのアプローチの中からインクルーシブデザインに着目した理由を教えていただけますか。 井田さん:実はわたしたちには原体験があるんです。10年くらい前に、ワークショップにおいて当事者と対話を重ねて開発をするという、インクルーシブデザインを体験しました。そこでは、杖を着いた方、白杖の方、盲導犬を連れた方、ベビーカーをひいたお母さんなど、多くの人が使う役所のソファを、多様な人が使いやすいものにするにはどのようにしたらよいかを考えてデザインをしました。...

「対話」から生まれた新しい価値/INTERVIEW

わたしたちが目指す「多様な人も、動植物も、地球環境も、誰もどれも取り残さないオールインクルーシブな社会」の実現は、SOLITだけの力で、手が届くものではありません。オールインクルーシブな社会の考え方に共感をしてくれる個人の存在、家庭の存在、企業の存在、町の存在などがいて、みんながそれぞれのオールインクルーシブに向かって取り組む必要があります。 そんなオールインクルーシブな社会に共感し、そして会社として具体的な取り組みを行っている、コクヨ株式会社(以下、コクヨ社)。今回は、コクヨ社でオールインクルーシブな取り組みの実践者として働く、井田幸男さん(CSV本部サステナビリティ推進室 理事)、林友彦さん(ワークプレイス事業本部ものづくり本部シーティング開発部大阪グループ・社会のWell-beingタスクフォース兼務)、江崎舞さん(働き方改革室・社会のWell-beingタスクフォース兼務)にインタビューをしました。 コクヨでは、一人ひとりが多様な人の違いを受け入れ、尊重することで、個人が自分らしく能力が発揮できる環境を整えるというD&I(Diversity&Inclusion)の取り組みに加え、それによって生まれた価値を、より多くの人に届けるという「D&I&I(Diversity&Inclusion&Innovation)」という取り組みも行っています。 今回のJOURNALで、企業が今取り組むべき課題はどのようなものなのか、D&Iに全社で取り組む意思決定は社内外にどのような影響をもたらすのかなどについて知っていただけると嬉しいです。   「新しい価値」への期待から生まれたコクヨのD&I&I(Innovation) ー部署やチームごとの取り組みではなく、全社の意思決定としてコクヨがD&Iの推進を決めた理由を教えていただけますか? 井田さん:最初のきっかけは強烈な課題意識でした。例えば、障がいのある方への企業の取り組みでいうと、障害者雇用促進法における法定雇用率の基準を満たしているからD&Iに取り組んでいるという考え方もあると思います。しかし、私たちは「法定雇用率を守るだけで果たして多様性を包括できているのか」という課題意識のもと、議論が始まったのが意思決定の前提としてあります。 議論をするうえで、2つの問題提起をしました。 1つ目は、「D&Iの取り組みは障がいがある人だけが対象なのか」ということです。例えば、セクシュアルマイノリティや高齢者、ヤングケアラーなど多様性への取り組みの対象としてもっと視野を広げるべきなのではないかということを考えました。 2つ目は、「インクルージョンしているって何だろう」ということです。例えば、特例子会社によって障がいがある人を雇用することはできているけれど、コクヨで働く社員がそこで働く方たちと対話を重ねて、一緒に仕事をすることはできていないという状況がありました。そのやり方の延長線上では、これから先、通用しないのではないかと考えました。   ー議論の中で、どのように意思決定をしたのでしょうか? 井田さん:意思決定においては2つのポイントがあります。 1つ目は、経営における課題としてとらえたことです。人事という1つの部署や特例子会社だけが取り組むべき課題であるのか、ということを考えたとき、経営として全社で取り組む課題だという結論に至りました。 2つ目は、なぜ全社の意思決定としたのかという部分にもつながりますが、コクヨが今後成長したい方向性とD&Iの方向性が一致したことが挙げられます。例えば、段差のあるオフィスや右利きの人用に作られているはさみなどによって起こる困りごとを、当事者と対話を重ねることで解決できるとすれば、そのニーズは必ずあるはずで、コクヨにとっても新しい価値になるのではないかと考えました。 ーリターンのスピード感が求められる大企業にとってD&Iに取り組むことは難しいことだと思いますが、大企業としてD&Iに取り組むことへの価値はどのようにとらえているのでしょうか? 井田さん:すごく簡単に言うと、イノベイティブということだと思います。リターンという観点においては、困りごとを解決することによって社会システムが良くなると、それに対してお金を払ってでも取り組もうという考えになると思うので、経済合理性の面ではリターンのあることだととらえています。 また、世の中に対する価値観のセットという点においても重要なことだと思っています。社会システムが「障がい」を作り出しているととらえ、それを無くすための事業活動をするという新たな価値観を示すことができると考えています。 ー「イノベイティブ」という言葉がありましたが、それがコクヨがかかげているD&I&I(Innovation)につながっているということなのでしょうか? 井田さん:そうですね。コクヨの考えるD&Iの形は、社内の困っている人にむけて、オフィスの段差や家具、文房具などの在り方を考え、試してみて一緒に働く環境を整えることです。そして、コクヨの考えるD&I&I(Innovation)は、社内で試したものを商品化して販売することによって社内にとどまらず、世の中で困っているより多くの人に価値を届けられるということです。 インクルーシブデザインに期待をこめて ーこれまでの具体的なD&I&Iの取り組みを教えていただけますか。 井田さん:私は主にD&Iの部分を担っています。D&Iにおける具体的な取り組みは、2030年チャレンジ目標として「インクルーシブデザインを経た新シリーズ上市率を50%以上にする」とKPIを設定するなど、全社としての目標を掲げたことが大きいと思います。一般的に、企業は来年度の売り上げ目標を提示し、株価が上がったり下がったりするという構造なのですが、このような社会的な価値に対しても、会社として目標を設定しました。 これは、外部に対してとは別に内部に対しても大きな影響があったと思います。例えば、商品の開発においては、開発プロセスにインクルーシブデザインを加えるとなると、単純に仕事が増え、負担やコストがかかってしまう。しかし、そこに全社の目標があり、その対価としてのサラリーがしっかりあることで動きやすくなったと考えています。 林さん:私はオフィス家具の開発を通じて、主に「&I(Innovation)」の部分を担っています。「&I(Innovation)」の突破口としてオフィス家具の開発にインクルーシブデザインを取り入れているのですが、メーカー部門だけでインクルーシブデザインに対するアクションを起こせるかというとやはり難しい部分があると思うんですよね。 マスのターゲットに対して平均的なモノをつくり、より多くの利益をあげることをどうしても考えてしまうので。ただ、井田も言っていたように、全社のKPIがあることによって、勇気を持って取り組めることにつながります。慈善事業ではなく、しっかりとリターンを考えて取り組むことが、私たちのチームを後押ししてくれました。 ー数ある多様性へのアプローチの中からインクルーシブデザインに着目した理由を教えていただけますか。 井田さん:実はわたしたちには原体験があるんです。10年くらい前に、ワークショップにおいて当事者と対話を重ねて開発をするという、インクルーシブデザインを体験しました。そこでは、杖を着いた方、白杖の方、盲導犬を連れた方、ベビーカーをひいたお母さんなど、多くの人が使う役所のソファを、多様な人が使いやすいものにするにはどのようにしたらよいかを考えてデザインをしました。...

日常の中にあるファッションや車いす/INTERVIEW

日常の中にあるファッションや車いす/INTERVIEW

こんにちは!SOLITインターンのあおいです。 今回、SOLIT創立初期から応援してくださっていて、YouTubeでの活動もされているSOLITユーザーの中島 幹太さんにSOLITのプロダクトの価値や、YouTube活動に対する想いなどをインタビューをしました。 実際にSOLITのプロダクトが中島さんの手元に届いてから、どのような景色を見せてもらっているか、中島さんのあたたかい人柄や言葉選びにはどのような想いが込められているかなどをぜひ知っていただきたいです。   機能面だけではなく、心の支えとしてのSOLITの価値 ーファッションにおいて、困っている(または困っていた)ことを教えていただけますか? やっぱり身近に売っている服には自分の体に合うサイズがないことです。僕は右腕が変形しているので、腕の部分が締め付けられてしまうんです。だからといって、ゆとりがある服を着ると、袖が長くて車いすが漕ぎづらくなってしまって…。 「この服いいな」と思っても実際に着てみると自分の身体に合わず、断念することがよくあります。 数ある服の中でも、中学生くらいの時からずっとジャケットに憧れがあったんですよ。でも、一般的なジャケットを売っているお店で実際に着てみると、やはり締め付けられる感覚があったり、身体に合うものが無かったりして、購入をあきらめることが多く、とっても残念だなと思っていました。 そんな時、SOLITに出会って、念願のジャケットを着ることができました。最初にこのジャケットに出会ったのは熊本の試着会の時で、腕を通した瞬間、とっても感動したのを覚えています。そこで、Dawn JacketとDawn Pantsのセットアップを購入しました。 Dawn Jacketはこちら Dawn Pantsはこちら ーありがとうございます!実際に着てみてSOLITのプロダクトのどんな部分に価値を感じてくださっていますか? 機能面と心理面の2つにおいて価値を感じています。機能面の価値としては、とにかく着心地がいいのでずっと着ていられるうえに、自分の身体に合わせて作っていただいているため、車いすを漕ぎやすいという点です。 心理面の価値は、自分への自信につながる点です。学生の頃は大学に行くときに着て行ったり、最近では大型連休で会社の同期と遊んだときにも着て行ったりと、本当にどこでもSOLITのプロダクトを着て行けるんですよね。だから、友人から「幹ちゃんといえばSOLITのセットアップのイメージだよね」とよく言ってもらえます。また、憧れのジャケットを着ることで気持ちが入って「頑張ろう!」と思えるんです。 SOLITの服が自分のイメージとして周りの人から認識してもらっていたり、憧れのジャケットによって気持ちが入ったりすることが、自分に自信をもつきっかけになります。自分の好きな服やお気に入りの服を着るとやっぱり気分が上がりますよね。 ー自分は無敵なんじゃないかと思いますよね! まさにそれです!これは障害の有無に関わらずみんな同じだと思います。お気に入りの服は自分を奮い立たせたり気分をあげたりしてくれる。そういった服に出会えたという点でSOLITに本当に感謝しています。 ーこちらこそありがとうございます。SOLITに「今後こんなことをしてほしい」といったご要望があれば聞かせていただけますか? 個人的にライダースジャケットが好きなのですが、今持っているものはきゅっと締め付けられる感覚があり、ずっと着ていると疲れてしまうことがあるので、着心地がいいライダースジャケットがあるといいなと思います。あとは、久しぶりにSOLITの皆さんとお話しできる試着会を地方でも開催していただけると嬉しいです。   YouTubeでの発信、そして「#あなたの隣に車いす」という言葉を通じて伝えたいこと ー中島さんは、共感してくれたメンバーとYouTubeチャンネルでの活動もされているのですよね。 そうなんです。「車いすいすいかんチャンネル」というチャンネル名でYouTubeでの発信をしています。SOLITのプロダクトを使ったコーデ紹介の動画も投稿させていただきました。 ーYouTube活動を始めたきっかけや、想いについて教えていただけますか?...

日常の中にあるファッションや車いす/INTERVIEW

こんにちは!SOLITインターンのあおいです。 今回、SOLIT創立初期から応援してくださっていて、YouTubeでの活動もされているSOLITユーザーの中島 幹太さんにSOLITのプロダクトの価値や、YouTube活動に対する想いなどをインタビューをしました。 実際にSOLITのプロダクトが中島さんの手元に届いてから、どのような景色を見せてもらっているか、中島さんのあたたかい人柄や言葉選びにはどのような想いが込められているかなどをぜひ知っていただきたいです。   機能面だけではなく、心の支えとしてのSOLITの価値 ーファッションにおいて、困っている(または困っていた)ことを教えていただけますか? やっぱり身近に売っている服には自分の体に合うサイズがないことです。僕は右腕が変形しているので、腕の部分が締め付けられてしまうんです。だからといって、ゆとりがある服を着ると、袖が長くて車いすが漕ぎづらくなってしまって…。 「この服いいな」と思っても実際に着てみると自分の身体に合わず、断念することがよくあります。 数ある服の中でも、中学生くらいの時からずっとジャケットに憧れがあったんですよ。でも、一般的なジャケットを売っているお店で実際に着てみると、やはり締め付けられる感覚があったり、身体に合うものが無かったりして、購入をあきらめることが多く、とっても残念だなと思っていました。 そんな時、SOLITに出会って、念願のジャケットを着ることができました。最初にこのジャケットに出会ったのは熊本の試着会の時で、腕を通した瞬間、とっても感動したのを覚えています。そこで、Dawn JacketとDawn Pantsのセットアップを購入しました。 Dawn Jacketはこちら Dawn Pantsはこちら ーありがとうございます!実際に着てみてSOLITのプロダクトのどんな部分に価値を感じてくださっていますか? 機能面と心理面の2つにおいて価値を感じています。機能面の価値としては、とにかく着心地がいいのでずっと着ていられるうえに、自分の身体に合わせて作っていただいているため、車いすを漕ぎやすいという点です。 心理面の価値は、自分への自信につながる点です。学生の頃は大学に行くときに着て行ったり、最近では大型連休で会社の同期と遊んだときにも着て行ったりと、本当にどこでもSOLITのプロダクトを着て行けるんですよね。だから、友人から「幹ちゃんといえばSOLITのセットアップのイメージだよね」とよく言ってもらえます。また、憧れのジャケットを着ることで気持ちが入って「頑張ろう!」と思えるんです。 SOLITの服が自分のイメージとして周りの人から認識してもらっていたり、憧れのジャケットによって気持ちが入ったりすることが、自分に自信をもつきっかけになります。自分の好きな服やお気に入りの服を着るとやっぱり気分が上がりますよね。 ー自分は無敵なんじゃないかと思いますよね! まさにそれです!これは障害の有無に関わらずみんな同じだと思います。お気に入りの服は自分を奮い立たせたり気分をあげたりしてくれる。そういった服に出会えたという点でSOLITに本当に感謝しています。 ーこちらこそありがとうございます。SOLITに「今後こんなことをしてほしい」といったご要望があれば聞かせていただけますか? 個人的にライダースジャケットが好きなのですが、今持っているものはきゅっと締め付けられる感覚があり、ずっと着ていると疲れてしまうことがあるので、着心地がいいライダースジャケットがあるといいなと思います。あとは、久しぶりにSOLITの皆さんとお話しできる試着会を地方でも開催していただけると嬉しいです。   YouTubeでの発信、そして「#あなたの隣に車いす」という言葉を通じて伝えたいこと ー中島さんは、共感してくれたメンバーとYouTubeチャンネルでの活動もされているのですよね。 そうなんです。「車いすいすいかんチャンネル」というチャンネル名でYouTubeでの発信をしています。SOLITのプロダクトを使ったコーデ紹介の動画も投稿させていただきました。 ーYouTube活動を始めたきっかけや、想いについて教えていただけますか?...

脊髄損傷者専門トレーニングジムが提供する、前例のないトレーニング/INTERVIEW

脊髄損傷者専門トレーニングジムが提供する、前例のないトレーニング/INTERVIEW

みなさんこんにちは!2022年2月からSOLITインターンをしている、あつきです。 本記事は、SOLITのプロダクトを実際に展示してくださり、多様な人も地球環境もともに考慮された「オールインクルーシブ」という考え方や価値観の発信拠点「SOLIT STAND」としてご協力いただいているみなさまへのインタビュー企画です。 SOLIT STANDの情報はこちら 今回は、東京・大阪・福岡にスタジオを構える脊髄損傷者専門トレーニングジム「J-Workout」。2022年4月からSOLIT STANDを設置していただいています。 そこで、J-Workout代表の伊佐さんにインタビューをお受けいただきました。 INTERVIEW 日本人ならではのトレーニングへのハードルを超えて ー 脊髄損傷者専門のトレーニングジムを始めたきっかけを教えてください。 元々は僕が20年ほど前に事故にあって脊髄損傷になったのですが、病院を出た後に、なかなか普通のトレーニングジムに行くのは難しいし、病院もある程度保険が終わるとリハビリがやりづらくなっていて、結構困ったんです。 そんな中、情報収集をしていたら、民間でも脊髄損傷者がトレーニングできるところが海外にあることを知りました。それがたまたま僕の同級生で、今は亡くなりましたが創設メンバーの渡辺淳の留学先だったんです。中学から同級生で一緒に部活もしていた親友が留学している先にそんな施設があると知ったので、見に行ってみました。 そこには、従来の病院やリハビリのイメージとは全く異なる状況があったんです。自分自身がもう一度歩くことに挑戦してみたいと思い、彼がそこに入社するタイミングで一緒に渡米して、トレーニングに励み、日本に帰ってきたのが、J-Workout立ち上げのきっかけです。 ー アメリカで学んだトレーニング方法を日本に持ってくる時に、身体的な特徴が日本とアメリカでは違うと思いますが、どのように日本人向けにされたんですか? 僕はトレーナーではないので、渡辺や創設メンバーがどんな苦労をしたか正確にはわかりません。ただ、感覚的にいうと、体つきの違いはもちろんですが、文化が違うので考え方も基本的に違います。その考え方の違いをまず乗り越える必要がありました。 日本はリハビリといえばタダでできるもの、病院はお金がかからないところというイメージなので、お金を出してでもやるメリットを伝える必要がありました。 ー トレーニング方法を日本人に合わせて調整させるだけではなく、文化的なところへの対応も重要だったんですね。 結局、寝てて薬を投与されて終わりではなくて、トレーニングは自身が続けていかなくちゃいけないこと。本人の意志がないと続かないですよね。 その中で、健常者であってもトレーニングジムに通うことがハードル高かった時代だったので、もう一度身体を鍛えなければどうなっていくか、という想像力から養っていかないといけませんでした。 日本では、何もしないことが安心、というところがあります。しかし、実際には何もしないことで失っていくというリスクもあるので、改めて感じてもらわなくちゃいけないなと思っています。 これまで15年やってきて、全員が元通りになった訳ではないことは事実です。けれど、その中で確実に、やってなかったら大変なことになっていたなと感じたり、続けているからこれができるようになった、など、トレーニングを続けることで獲得したものや失わずに済んでいることを感じられるということは大事だと思っています。   トレーナーに必要なのは、クライアントに寄り添うコミュニケーション ー 脊髄損傷の方を専門とするジムだからこそ、トレーナーの育成が大変そうに感じるのですが、どのようにされているんですか? とにかく時間をかけてちょっとずつなんです。マニュアルや教科書を作っていますが、やはり人も成長させなきゃいけません。実際にトレーニングするのはクライアントさん(ジムに通われている方のこと)で、そのクライアントさんにいかに寄り添えるか、そこを成長させるのが難しいですね。 技術だけだったら半年でなんとかなるかもしれないけれど、コミュニケーションの部分がとても大切です。 脊髄損傷だと身体に感覚がない方々が多いので、「痛いですか?」というコミュニケーションは取れず、表現も一人一人違います。いろんな方々の表現を理解して、正しい負荷でトレーニングを提供できるようになるまでは、当然知識や技術も必要ですが、コミュニケーションがすごく大切で時間がかかります。 ファッションという側面からも、一歩を踏み出す背中を押せたら ー SOLITのどこに共感してくださったんですか?...

脊髄損傷者専門トレーニングジムが提供する、前例のないトレーニング/INTERVIEW

みなさんこんにちは!2022年2月からSOLITインターンをしている、あつきです。 本記事は、SOLITのプロダクトを実際に展示してくださり、多様な人も地球環境もともに考慮された「オールインクルーシブ」という考え方や価値観の発信拠点「SOLIT STAND」としてご協力いただいているみなさまへのインタビュー企画です。 SOLIT STANDの情報はこちら 今回は、東京・大阪・福岡にスタジオを構える脊髄損傷者専門トレーニングジム「J-Workout」。2022年4月からSOLIT STANDを設置していただいています。 そこで、J-Workout代表の伊佐さんにインタビューをお受けいただきました。 INTERVIEW 日本人ならではのトレーニングへのハードルを超えて ー 脊髄損傷者専門のトレーニングジムを始めたきっかけを教えてください。 元々は僕が20年ほど前に事故にあって脊髄損傷になったのですが、病院を出た後に、なかなか普通のトレーニングジムに行くのは難しいし、病院もある程度保険が終わるとリハビリがやりづらくなっていて、結構困ったんです。 そんな中、情報収集をしていたら、民間でも脊髄損傷者がトレーニングできるところが海外にあることを知りました。それがたまたま僕の同級生で、今は亡くなりましたが創設メンバーの渡辺淳の留学先だったんです。中学から同級生で一緒に部活もしていた親友が留学している先にそんな施設があると知ったので、見に行ってみました。 そこには、従来の病院やリハビリのイメージとは全く異なる状況があったんです。自分自身がもう一度歩くことに挑戦してみたいと思い、彼がそこに入社するタイミングで一緒に渡米して、トレーニングに励み、日本に帰ってきたのが、J-Workout立ち上げのきっかけです。 ー アメリカで学んだトレーニング方法を日本に持ってくる時に、身体的な特徴が日本とアメリカでは違うと思いますが、どのように日本人向けにされたんですか? 僕はトレーナーではないので、渡辺や創設メンバーがどんな苦労をしたか正確にはわかりません。ただ、感覚的にいうと、体つきの違いはもちろんですが、文化が違うので考え方も基本的に違います。その考え方の違いをまず乗り越える必要がありました。 日本はリハビリといえばタダでできるもの、病院はお金がかからないところというイメージなので、お金を出してでもやるメリットを伝える必要がありました。 ー トレーニング方法を日本人に合わせて調整させるだけではなく、文化的なところへの対応も重要だったんですね。 結局、寝てて薬を投与されて終わりではなくて、トレーニングは自身が続けていかなくちゃいけないこと。本人の意志がないと続かないですよね。 その中で、健常者であってもトレーニングジムに通うことがハードル高かった時代だったので、もう一度身体を鍛えなければどうなっていくか、という想像力から養っていかないといけませんでした。 日本では、何もしないことが安心、というところがあります。しかし、実際には何もしないことで失っていくというリスクもあるので、改めて感じてもらわなくちゃいけないなと思っています。 これまで15年やってきて、全員が元通りになった訳ではないことは事実です。けれど、その中で確実に、やってなかったら大変なことになっていたなと感じたり、続けているからこれができるようになった、など、トレーニングを続けることで獲得したものや失わずに済んでいることを感じられるということは大事だと思っています。   トレーナーに必要なのは、クライアントに寄り添うコミュニケーション ー 脊髄損傷の方を専門とするジムだからこそ、トレーナーの育成が大変そうに感じるのですが、どのようにされているんですか? とにかく時間をかけてちょっとずつなんです。マニュアルや教科書を作っていますが、やはり人も成長させなきゃいけません。実際にトレーニングするのはクライアントさん(ジムに通われている方のこと)で、そのクライアントさんにいかに寄り添えるか、そこを成長させるのが難しいですね。 技術だけだったら半年でなんとかなるかもしれないけれど、コミュニケーションの部分がとても大切です。 脊髄損傷だと身体に感覚がない方々が多いので、「痛いですか?」というコミュニケーションは取れず、表現も一人一人違います。いろんな方々の表現を理解して、正しい負荷でトレーニングを提供できるようになるまでは、当然知識や技術も必要ですが、コミュニケーションがすごく大切で時間がかかります。 ファッションという側面からも、一歩を踏み出す背中を押せたら ー SOLITのどこに共感してくださったんですか?...

金沢福祉用具情報プラザの、異なる福祉用具を異なる人へ届ける方法/INTERVIEW

金沢福祉用具情報プラザの、異なる福祉用具を異なる人へ届ける方法/INTERVIEW

みなさんこんにちは!2022年7月からSOLITインターンをしている、きみかです。 本記事は、SOLITのプロダクトを実際に展示してくださり、多様な人も地球環境もともに考慮された「オールインクルーシブ」という考え方や価値観の発信拠点「SOLIT STAND」としてご協力いただいているみなさまへのインタビュー企画です。 今回は、石川県の金沢市にあり、福祉用具を数多く展示している「金沢福祉用具情報プラザ」。2021年11月からSOLIT STANDを設置していただいています。 展示品を管理されている本田さんにインタビューをお受けいただきました。 INTERVIEW 出来ないを出来るに変える一つの手段 ー 金沢福祉用具情報プラザとは、どんな施設ですか? 石川県金沢市にある福祉用具の常設展示場です。衣服や入浴用具、排泄用具、車いすなどの移動機器、食事用具など、あらゆる種類の福祉用具を約1200点展示しています。 当プラザでは、福祉用具の購入を検討中の方を対象に、試用貸出を1週間無料で行っています。それは、福祉用具を使用し続けるにあたって、生活環境に適合するのかを実際に使用する場所で体験していただくことは重要だと思っているからです。 ー 福祉用具の魅力は何ですか? 今できないことを出来るようにしてくれる魅力があります。また、福祉用具は人のやる気にも介入できます。例えば、SOLITのDawn Jacketは、脇にマチをつけて肩まわりを動きやすくすることで、車いすが漕ぎやすくなるように工夫されてますよね。 そのことによって、漕ぎづらかった車いすがDawn Jacketを着ることで漕ぎやすくなったら行動範囲も広がると思います。福祉用具も同じように、利用者の「出来る」を増やして、やる気を上げることにつながります。 「一人一人を知ること」が、福祉用具の魅力を引き出す ー 福祉用具の魅力を伝える際に心がけていることは何ですか? 福祉用具は同じものはひとつも置いていないので、一つ一つどんな機能や特徴があるのか把握するようにしています。また、障害の種類は同じでも、住んでいる環境や性別、年齢、好みなど、福祉用具を使われる方にはさまざまな違いがあります。そのため、その方がどういう方なのかを聞き取り、知ることを一番に心がけています。そこから、その方に合う福祉用具を提案します。 提案をして、来館された方の悩みに合った福祉用具を選べた時に、やりがいを感じます。逆に難しいと感じることは、来館された方の障害や生活の悩みに合った福祉用具が見つけられないときです。 ー 「金沢福祉用具情報プラザ」を一言で表すなら何ですか? 「見て、触れて、体験できる」施設だということです。実際に見て体験してみて、初めてその用具がどれだけ便利なのかを知ることができると思っています。   障害のある方も、もっと外出して欲しい ー SOLITとの出会いはいつですか? 昨年、知り合いの作業療法士からお洒落で障害のある方も着やすいファッションメーカーがあると聞いたのが最初です。その後、興味を持ち、代表の田中さんに連絡させてもらいました。また、昨年の10月に石川県で試着会をされていた時に、実際にプロダクトを初めて見させてもらいました。 ー SOLITの「オールインクルーシブ」という考え方のどこに共感してくださったんですか? 私は「誰も取り残さない」という考え方に共感しました。なぜなら、この考え方は福祉用具を扱ううえでも共通しているからです。福祉用具の役割として、誰も取り残さないように色んな用具があって、その人の自立度や、やりたいことを達成するために福祉用具が存在しています。 ー なぜSOLIT STANDをやろうと思ってくださったのですか?...

金沢福祉用具情報プラザの、異なる福祉用具を異なる人へ届ける方法/INTERVIEW

みなさんこんにちは!2022年7月からSOLITインターンをしている、きみかです。 本記事は、SOLITのプロダクトを実際に展示してくださり、多様な人も地球環境もともに考慮された「オールインクルーシブ」という考え方や価値観の発信拠点「SOLIT STAND」としてご協力いただいているみなさまへのインタビュー企画です。 今回は、石川県の金沢市にあり、福祉用具を数多く展示している「金沢福祉用具情報プラザ」。2021年11月からSOLIT STANDを設置していただいています。 展示品を管理されている本田さんにインタビューをお受けいただきました。 INTERVIEW 出来ないを出来るに変える一つの手段 ー 金沢福祉用具情報プラザとは、どんな施設ですか? 石川県金沢市にある福祉用具の常設展示場です。衣服や入浴用具、排泄用具、車いすなどの移動機器、食事用具など、あらゆる種類の福祉用具を約1200点展示しています。 当プラザでは、福祉用具の購入を検討中の方を対象に、試用貸出を1週間無料で行っています。それは、福祉用具を使用し続けるにあたって、生活環境に適合するのかを実際に使用する場所で体験していただくことは重要だと思っているからです。 ー 福祉用具の魅力は何ですか? 今できないことを出来るようにしてくれる魅力があります。また、福祉用具は人のやる気にも介入できます。例えば、SOLITのDawn Jacketは、脇にマチをつけて肩まわりを動きやすくすることで、車いすが漕ぎやすくなるように工夫されてますよね。 そのことによって、漕ぎづらかった車いすがDawn Jacketを着ることで漕ぎやすくなったら行動範囲も広がると思います。福祉用具も同じように、利用者の「出来る」を増やして、やる気を上げることにつながります。 「一人一人を知ること」が、福祉用具の魅力を引き出す ー 福祉用具の魅力を伝える際に心がけていることは何ですか? 福祉用具は同じものはひとつも置いていないので、一つ一つどんな機能や特徴があるのか把握するようにしています。また、障害の種類は同じでも、住んでいる環境や性別、年齢、好みなど、福祉用具を使われる方にはさまざまな違いがあります。そのため、その方がどういう方なのかを聞き取り、知ることを一番に心がけています。そこから、その方に合う福祉用具を提案します。 提案をして、来館された方の悩みに合った福祉用具を選べた時に、やりがいを感じます。逆に難しいと感じることは、来館された方の障害や生活の悩みに合った福祉用具が見つけられないときです。 ー 「金沢福祉用具情報プラザ」を一言で表すなら何ですか? 「見て、触れて、体験できる」施設だということです。実際に見て体験してみて、初めてその用具がどれだけ便利なのかを知ることができると思っています。   障害のある方も、もっと外出して欲しい ー SOLITとの出会いはいつですか? 昨年、知り合いの作業療法士からお洒落で障害のある方も着やすいファッションメーカーがあると聞いたのが最初です。その後、興味を持ち、代表の田中さんに連絡させてもらいました。また、昨年の10月に石川県で試着会をされていた時に、実際にプロダクトを初めて見させてもらいました。 ー SOLITの「オールインクルーシブ」という考え方のどこに共感してくださったんですか? 私は「誰も取り残さない」という考え方に共感しました。なぜなら、この考え方は福祉用具を扱ううえでも共通しているからです。福祉用具の役割として、誰も取り残さないように色んな用具があって、その人の自立度や、やりたいことを達成するために福祉用具が存在しています。 ー なぜSOLIT STANDをやろうと思ってくださったのですか?...

徳武産業の「お客様に寄り添う」心とプロダクト/INTERVIEW

徳武産業の「お客様に寄り添う」心とプロダクト/INTERVIEW

みなさんこんにちは!2022年2月からSOLITインターンをしている、あつきです。 本記事は、SOLITのプロダクトを実際に展示してくださり、多様な人も地球環境もともに考慮された「オールインクルーシブ」という考え方や価値観の発信拠点「SOLIT STAND」としてご協力いただいているみなさまへのインタビュー企画です。 SOLIT STANDの情報はこちら まずは、香川県を本拠地とする、ケアシューズ専門メーカーあゆみシューズを展開する「徳武産業株式会社」。2022年3月からSOLIT STANDを設置していただいています。 企画開発や営業を経て、現在はあゆみシューズのショップスタッフをされている西木さんにインタビューをお受けいただきました。 INTERVIEW 現場の実情を入れ込んだプロダクト ー どんなプロダクトを提供していらっしゃいますか? 徳武産業はもともと手袋産業やトラベル用のスリッパなど縫製の委託生産をやっていました。そんな時に、近所の老人施設の方から高齢者の転倒がとても多いと相談を受けました。 調査したところ、筋力が低下していたり様々な体の不自由さがあるために、屋内で履いているスリッパでは、うまく足を運べず、ちょっとした段差だったり床の環境で引っかかってしまうことがわかりました。そこで、履きものが原因なのではないか、ということになりました。そこから、神戸・長田の靴職人と研究を重ねて、「転びにくい靴」を開発しました。 ヒアリングをする中で、高齢者にとって脱ぎ履きの動作も重要ですし、片方ずつ足の状態やサイズが違うなど、転びにくいようにするためにはその方々に寄り添わないとクリアできないと当初から発見しました。発売開始後すぐ、靴底の高さやベルトの長さが変えられるなど症状に応じて部分的にカスタマイズができるパーツオーダーシステムを始めました。 販売当初から、高齢者の現場の意見・実情を入れ込んだプロダクトができています。それが原点なので、「あゆみシューズ」というブランドは現場のモニタリングを大切に、本当にそれが必要なのか、安全性は大丈夫なのか、などかなり厳しい会議をしてみんなが納得してイメージできるものをつくっています。 ー 企画の段階から施設やデイサービスに足を運んでいるとのことですが、一つの商品を生み出すのに、どれくらいの時間がかかっているんですか? ものによりますが、半年〜1年はかかっていると思います。 ヒアリングを経て実現する時、生産する工場にとって難しいことが多いので、そこの折り合いが大変ですね。ニッチすぎてフィードバックの量が集まるのに時間はかかりますが、だんだんフィードバックをもらうまでの流れがスムーズになってきています。 今の主軸は高齢者のルームシューズなどのケア用品ラインと、病院の売店などで早期退院のために転倒しにくいシューズやがん治療で脱毛する方の帽子などを販売するメディカルラインの二つです。もう一つ新規でやっているのが、脚立を登って工事をする方などが踏ん張れるルームシューズを作るお仕事ラインです。 これまで「あゆみ」で培った技術や素材の使い方を用いて様々なラインを展開していますが、共通しているのは、ニッチだけれど、ちゃんと人の役に立つかどうかをベースにしているところです。 ー 西木さんはどうして徳武産業に? 医療福祉専門学校の整形靴科で学んでいました。そこで学んだのは、「いかに歩かせるか」だったのですが、「あゆみシューズ」を訪れた時に、縫製中心の会社だったので室内履きが豊富なことに疑問を覚えました。 「歩くことが難しくても、靴を履くことはその人の人権で、その人の社会的地位を守るもの」という言葉を聞いて感動して、歩いていないから履きものはいらない・なんでもいいという考えは持っていなくて、人を大切にしているところが響きました。   スタッフ全員のベースにあるのは「お客様に寄り添っているか」 ー「利益は必要だが最優先であってはいけない」というこだわりを貫くモチベーションになっているのはどんなことですか? お客様からお手紙をいただくことですね。こちらから手書きでメッセージを添えたり、お誕生日プレゼントを2年間送ったりしているのですが、そのあたたかさがお客様にも伝わってか、お客様からお手紙をいただいたり、アンケートはがきに丁寧に答えてくれたり。 お客様から感謝してもらう事はもちろん嬉しいのですが、さらに、この靴の存在が、その人の人生のポイントの一つになっている事を、お手紙やはがきを通して、きちんと私たちが確認できるようになっているので、私たちはお客様の人生にとって大切なものを作っているのだと振り返りができる事もモチベーションになっています。 様々な年代のスタッフがおりますが、みんな最終的にベースとなっているのは「お客様に寄り添っているか」なので、売り上げにつながるかどうか、ではないなと思っています。みんな自分達の商品にプライドを持っているから繋がっているのではないかなと思います。 SOLIT...

徳武産業の「お客様に寄り添う」心とプロダクト/INTERVIEW

みなさんこんにちは!2022年2月からSOLITインターンをしている、あつきです。 本記事は、SOLITのプロダクトを実際に展示してくださり、多様な人も地球環境もともに考慮された「オールインクルーシブ」という考え方や価値観の発信拠点「SOLIT STAND」としてご協力いただいているみなさまへのインタビュー企画です。 SOLIT STANDの情報はこちら まずは、香川県を本拠地とする、ケアシューズ専門メーカーあゆみシューズを展開する「徳武産業株式会社」。2022年3月からSOLIT STANDを設置していただいています。 企画開発や営業を経て、現在はあゆみシューズのショップスタッフをされている西木さんにインタビューをお受けいただきました。 INTERVIEW 現場の実情を入れ込んだプロダクト ー どんなプロダクトを提供していらっしゃいますか? 徳武産業はもともと手袋産業やトラベル用のスリッパなど縫製の委託生産をやっていました。そんな時に、近所の老人施設の方から高齢者の転倒がとても多いと相談を受けました。 調査したところ、筋力が低下していたり様々な体の不自由さがあるために、屋内で履いているスリッパでは、うまく足を運べず、ちょっとした段差だったり床の環境で引っかかってしまうことがわかりました。そこで、履きものが原因なのではないか、ということになりました。そこから、神戸・長田の靴職人と研究を重ねて、「転びにくい靴」を開発しました。 ヒアリングをする中で、高齢者にとって脱ぎ履きの動作も重要ですし、片方ずつ足の状態やサイズが違うなど、転びにくいようにするためにはその方々に寄り添わないとクリアできないと当初から発見しました。発売開始後すぐ、靴底の高さやベルトの長さが変えられるなど症状に応じて部分的にカスタマイズができるパーツオーダーシステムを始めました。 販売当初から、高齢者の現場の意見・実情を入れ込んだプロダクトができています。それが原点なので、「あゆみシューズ」というブランドは現場のモニタリングを大切に、本当にそれが必要なのか、安全性は大丈夫なのか、などかなり厳しい会議をしてみんなが納得してイメージできるものをつくっています。 ー 企画の段階から施設やデイサービスに足を運んでいるとのことですが、一つの商品を生み出すのに、どれくらいの時間がかかっているんですか? ものによりますが、半年〜1年はかかっていると思います。 ヒアリングを経て実現する時、生産する工場にとって難しいことが多いので、そこの折り合いが大変ですね。ニッチすぎてフィードバックの量が集まるのに時間はかかりますが、だんだんフィードバックをもらうまでの流れがスムーズになってきています。 今の主軸は高齢者のルームシューズなどのケア用品ラインと、病院の売店などで早期退院のために転倒しにくいシューズやがん治療で脱毛する方の帽子などを販売するメディカルラインの二つです。もう一つ新規でやっているのが、脚立を登って工事をする方などが踏ん張れるルームシューズを作るお仕事ラインです。 これまで「あゆみ」で培った技術や素材の使い方を用いて様々なラインを展開していますが、共通しているのは、ニッチだけれど、ちゃんと人の役に立つかどうかをベースにしているところです。 ー 西木さんはどうして徳武産業に? 医療福祉専門学校の整形靴科で学んでいました。そこで学んだのは、「いかに歩かせるか」だったのですが、「あゆみシューズ」を訪れた時に、縫製中心の会社だったので室内履きが豊富なことに疑問を覚えました。 「歩くことが難しくても、靴を履くことはその人の人権で、その人の社会的地位を守るもの」という言葉を聞いて感動して、歩いていないから履きものはいらない・なんでもいいという考えは持っていなくて、人を大切にしているところが響きました。   スタッフ全員のベースにあるのは「お客様に寄り添っているか」 ー「利益は必要だが最優先であってはいけない」というこだわりを貫くモチベーションになっているのはどんなことですか? お客様からお手紙をいただくことですね。こちらから手書きでメッセージを添えたり、お誕生日プレゼントを2年間送ったりしているのですが、そのあたたかさがお客様にも伝わってか、お客様からお手紙をいただいたり、アンケートはがきに丁寧に答えてくれたり。 お客様から感謝してもらう事はもちろん嬉しいのですが、さらに、この靴の存在が、その人の人生のポイントの一つになっている事を、お手紙やはがきを通して、きちんと私たちが確認できるようになっているので、私たちはお客様の人生にとって大切なものを作っているのだと振り返りができる事もモチベーションになっています。 様々な年代のスタッフがおりますが、みんな最終的にベースとなっているのは「お客様に寄り添っているか」なので、売り上げにつながるかどうか、ではないなと思っています。みんな自分達の商品にプライドを持っているから繋がっているのではないかなと思います。 SOLIT...