脊髄損傷者専門トレーニングジムが提供する、前例のないトレーニング/INTERVIEW

脊髄損傷者専門トレーニングジムが提供する、前例のないトレーニング/INTERVIEW

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みなさんこんにちは!2022年2月からSOLITインターンをしている、あつきです。

本記事は、SOLITのプロダクトを実際に展示してくださり、多様な人も地球環境もともに考慮された「オールインクルーシブ」という考え方や価値観の発信拠点「SOLIT STAND」としてご協力いただいているみなさまへのインタビュー企画です。

SOLIT STANDの情報はこちら

今回は、東京・大阪・福岡にスタジオを構える脊髄損傷者専門トレーニングジム「J-Workout」。2022年4月からSOLIT STANDを設置していただいています。

そこで、J-Workout代表の伊佐さんにインタビューをお受けいただきました。

INTERVIEW

日本人ならではのトレーニングへのハードルを超えて

ー 脊髄損傷者専門のトレーニングジムを始めたきっかけを教えてください。

元々は僕が20年ほど前に事故にあって脊髄損傷になったのですが、病院を出た後に、なかなか普通のトレーニングジムに行くのは難しいし、病院もある程度保険が終わるとリハビリがやりづらくなっていて、結構困ったんです。

そんな中、情報収集をしていたら、民間でも脊髄損傷者がトレーニングできるところが海外にあることを知りました。それがたまたま僕の同級生で、今は亡くなりましたが創設メンバーの渡辺淳の留学先だったんです。中学から同級生で一緒に部活もしていた親友が留学している先にそんな施設があると知ったので、見に行ってみました。

そこには、従来の病院やリハビリのイメージとは全く異なる状況があったんです自分自身がもう一度歩くことに挑戦してみたいと思い、彼がそこに入社するタイミングで一緒に渡米して、トレーニングに励み、日本に帰ってきたのが、J-Workout立ち上げのきっかけです。

J-workout 伊佐さん

ー アメリカで学んだトレーニング方法を日本に持ってくる時に、身体的な特徴が日本とアメリカでは違うと思いますが、どのように日本人向けにされたんですか?

僕はトレーナーではないので、渡辺や創設メンバーがどんな苦労をしたか正確にはわかりません。ただ、感覚的にいうと、体つきの違いはもちろんですが、文化が違うので考え方も基本的に違います。その考え方の違いをまず乗り越える必要がありました。

日本はリハビリといえばタダでできるもの、病院はお金がかからないところというイメージなので、お金を出してでもやるメリットを伝える必要がありました。

ー トレーニング方法を日本人に合わせて調整させるだけではなく、文化的なところへの対応も重要だったんですね。

結局、寝てて薬を投与されて終わりではなくて、トレーニングは自身が続けていかなくちゃいけないこと。本人の意志がないと続かないですよね。

その中で、健常者であってもトレーニングジムに通うことがハードル高かった時代だったので、もう一度身体を鍛えなければどうなっていくか、という想像力から養っていかないといけませんでした。

日本では、何もしないことが安心、というところがあります。しかし、実際には何もしないことで失っていくというリスクもあるので、改めて感じてもらわなくちゃいけないなと思っています。

これまで15年やってきて、全員が元通りになった訳ではないことは事実です。けれど、その中で確実に、やってなかったら大変なことになっていたなと感じたり、続けているからこれができるようになった、など、トレーニングを続けることで獲得したものや失わずに済んでいることを感じられるということは大事だと思っています。

 脊髄損傷に特化したジム

トレーナーに必要なのは、クライアントに寄り添うコミュニケーション

ー 脊髄損傷の方を専門とするジムだからこそ、トレーナーの育成が大変そうに感じるのですが、どのようにされているんですか?

とにかく時間をかけてちょっとずつなんです。マニュアルや教科書を作っていますが、やはり人も成長させなきゃいけません。実際にトレーニングするのはクライアントさん(ジムに通われている方のこと)で、そのクライアントさんにいかに寄り添えるか、そこを成長させるのが難しいですね。

技術だけだったら半年でなんとかなるかもしれないけれど、コミュニケーションの部分がとても大切です。

脊髄損傷だと身体に感覚がない方々が多いので、「痛いですか?」というコミュニケーションは取れず、表現も一人一人違います。いろんな方々の表現を理解して、正しい負荷でトレーニングを提供できるようになるまでは、当然知識や技術も必要ですが、コミュニケーションがすごく大切で時間がかかります。

J-workoutでの試着会風景

ファッションという側面からも、一歩を踏み出す背中を押せたら

ー SOLITのどこに共感してくださったんですか?

障がい者に向けたものだったり、いろんな困りごとを解決するアクションが生まれては消えていく、というところをこれまでみてきました。

やっぱりビジネスとしてちゃんと続けていかないと潰れてしまいます。そして、潰れてしまうことが当事者にとって一番残念なことです。そのため、自分達にとっても便利なものは潰れないでほしくて、応援したいと思いました。

これまでにファッションの提案はたくさんありましたが、本当に続いたところって少ないんです。必要なものが必要な人に届いていないということは、いいものができたとしても結果的になくなってしまうので、そこは少しでも応援して、広めていって、続いてほしいと思っています。

SOLITさんはビジネスとしてしっかりされているので、サポートしたいなというところからスタートしました。

ー SOLIT STANDをやってみて、感じたことはありますか?

クライアントさんが、それをもとに話していたり、横のつながりができたりなど、一つのツールとして役立っているなと感じています。値段だけ見ると「結構する」と思う人もいらっしゃるんですが、それってまだ価値が届いていないということなので、そんな人にも羽織ってみようと思ってもらえるような機会を作っていけたらいいですね。

そもそもジャケットを着れないと思って、「それに2万強払うのはちょっと、、」と思っている方々は、もったいないと思うんです。なぜなら、2万強で着れるものが手に入る、ということを知れば、そこに価値を感じられるものだと思っているからです。

身体に障害があっても着れるジャケットは、いくら積んでも作ってくれる人がいなければ手に入らないものなので、そこは金額ではないというところを伝えていければと思います。

J-workoutでの試着会風景

ー 副次的なものだと思われがちなファッションを楽しむことによる精神面への影響を感じたことはありますか?

一歩踏み出すことってすごく大事ですよね。車椅子になったら外に行っちゃいけないんだと思って、トレーニングに来る時以外はずっと家にいるという人もまだまだいます。その方々に横の繋がりができて、それがどんなきっかけかわからないけれど、「行っていいんだ!」となると一歩踏み出せると思うんです。

元々オシャレが大好きだったけど、着れる服がなくなって「こんな服じゃ外にいけない」と感じている人が、一つのツールがあることで踏み出せたりすることもあると思います。そのため、洋服という側面からも、背中を推せたらいいなと思います。

 

J-Workoutについて

J-Workoutは日本初の脊髄損傷者専門トレーニングジム。独自のトレーニング技術で脊髄損傷者の歩行機能再獲得を目指している。東京、大阪、福岡にスタジオを構え、アメリカ発の技術をアジア人に適合させた独自メソッドや、オリジナルのトレーニングマシンを用いて、トレーナーが完全オーダーメイドでクライアントの回復度合いやその日のコンディションに合わせてメニューを組み立てている。

J-Workoutの詳細はこちら

https://j-workout.com/index.html

https://www.instagram.com/jworkout_japan/

https://twitter.com/jworkout

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