株式会社ソリッドラボ代表 黒田悠生さんと考える「ファッションとファブからのインクルーシブアプローチ」/ INTERVIEW

株式会社ソリッドラボ代表 黒田悠生さんと考える「ファッションとファブからのインクルーシブアプローチ」/ INTERVIEW

目次

2022年1月29日(土) に、福井県福井市にあるTONKAN terrace(トンカンテラス)にて「トークセッション&試着会」が開催されました。テーマは「ファッションとファブからのインクルーシブアプローチ」。 今回、会場に来場された田中耿さんの視点で、トークセッションの内容をまとめていただいたので、掲載させていただきます。

このイベントについて

当初、TONKAN terrace(トンカンテラス)を運営する黒田さんのお父さんが車いすユーザーというつながりで、ここ「TONKAN terrace」が今回のイベント会場となったのだと思っていましたが、実際は両社の仕組みや考え方、目指すものに共通点があるからこその開催だとわかりました。

質疑応答も活発で、予定時間を超えてトークセッションは終了。試着の際に話すだけだと聞けなかったであろう、経緯や理念、野望の細かいところまで知ることができ、共感がより広がったのではないでしょうか。

トークセッション後、来場者の多くが試着。その場で購入を決める人もいました。実際に私も試着し、障がいの有無に関係なく誰にとっても着やすい服であることを実感しました。 これからの1年後、2年後、両社がどのように理想へと近づいていくのか、応援しつつ見守りたいと思います。

トークセッションのカバー写真

トークセッション

得意なものづくりで人の集まる地域の交流拠点を

黒田:
「TONKAN terrace」の代表、黒田です。これまでは完全に趣味でやってましたが、3日前に法人化して、株式会社ソリッドラボのTONKAN terrace 事業部みたいな位置付けになりました。では、設立の経緯なども含めてお話したいと思います。

うちの祖父は建具職人で、会場内に立てかけてある戸やふすまといった建具を作っていました。僕が小さい頃は、ここからカンナで削る音やトントンカンカンという音が常に聞こえていました。そういう経緯もあってか、僕はものづくりが好きです。また、長男として黒田家を継ぐようにずっと言われてきたこともあり、福井にあるものづくりの会社に就職しました。

僕の父は車いす生活を送っていて、母が自宅でつきっきりで介護しています。昔はキャンプや自転車で出かけることが好きな父でしたが、障がいをおってからは家から出られないような生活になり、それを介護する母もあまり出られないという感じでした。

当時、僕は東京で家族4人で暮らしていました。この場所が空いていることに気づいて、好きなものづくりをベースとした、地域とつながる場所を福井につくりたいと考えました。
うちの父と母が外に行かなくても人がここに来て交流できる、地域の人とつながれる場所。僕が得意なものづくりで、人が来るような拠点をつくりたいと思ったんです。

トントンカンカンと音がして、外に開いた場所ということから「TONKAN terrace」と名付けました。

今、絶賛機材購入中です。ここにある3Dプリンター、あそこにかかかっているレーザーカッター、昨日買ったデジタルミシン、そして祖父が使っていたノコギリやノミといったものを使って木工からデジタルなものまで、ものづくりができるような場所にしたいと思っています。

中学生が「文化祭の服を作りたい」と言ってここへ来て作る。地域の飲み友だちが「日本酒を飲むために、自分たちのオリジナル枡作ろう」と言ってここで作る。入学祝いで子どもにいすを作ってあげる。この場所を通して子どもがものづくりに触れ、それをきっかけに福井の産業で働きたいと思う人が増えるといいですね。

福井に出張ベースで来ていたときに初イベント「TONKAN terrace、プレオープン」を開催しました。その後、再び東京で暮らしていたのですが、コロナで東京にいながら会社へ行かずにテレワークを行う状況となり、去年の3月、福井に戻ってきました。この機会に「TONKAN terrace」をやりたいと思ったからです。

今日のキーワード、「インクルーシブ」の一番わかりやすい例として3Dプリンターを紹介します。2Dは平面で印刷するプリンター、それに対して上に伸びていくのが3Dプリンターです。

3Dプリンターの材料にはいろいろあるのですが、僕はPLA樹脂(ポリ乳酸)を使用しています。これは石油由来のプラスチックではなくて、サトウキビ、トウモロコシ、イモなどを使った植物由来の生分解するバイオプラスチックです。仮に完成品を燃やしても、出てくる二酸化炭素はサトウキビなどを燃やして出てくるものと同じです。いわゆるカーボンニュートラルといわれています。

3Dプリンター

通常コンセントを量産するとき、1個を作るために試作品を作ったり、余った部分を捨てるなど、何十キロという材料を使います。3Dプリンターは作るものだけの材料しか使わないので、無駄がありません。環境負荷はかなり抑えられると思います。

ほかのメリットとしては、データがあればすぐ作れること。姉がメキシコにいて3Dプリンターを持っているのですが、僕が設計したデータを送り、それをメキシコで作ったこともあります。輸送コストがかからず、金型もいりません。ただ、作るスピードが遅いので大量生産は、まだ難しいです。しかし技術が進歩しているので、もうすぐそこまで来ていると思います。

自宅で1年2年使うと、暮らしの中に3Dプリンターがあるよさがわかります。そのことを僕は広めていきたいと思っています。たとえば、思いついたらすぐ作れる。素人でも30分くらいのレクチャーで設計もできるようになるので、そんなにハードルは高くありません。アイディアスケッチを書いて図面化し、数時間後には完成します。

街中に住んでいると便利だと感じないですが、限界集落やコンビニまで1時間の田舎だと、家に3Dプリンターがあれば壊れたときに作ることができます。

おととしの4月頃に、フェイスシールドを作りました。このときフェイスシールドがなくなり、作るために必要な金型の完成には2か月かかる状況でした。大阪大学の教授が「データを配布するから、みんなで作って配ろう」ということを始めたので、僕も参加して70個くらい作り、病院などに送ったりしました。これを僕は分散型製造と呼んでいるのですが、インフラとして3Dプリンターが役に立つときもあります。

ここにあるいくつかのものは、ファブラボ品川(※1)のデータで作りました。3Dプリンターによる、特に福祉的なものの作り方における日本の先駆者、先頭を走っているところです。

介助を必要とする人が作業できるように手助けする作業療法士の方が、3Dプリンターで自分の患者さんが生活しやすいもの(自助具)を作り、そのデータをファブラボ品川のホームページに公開してくれていています。空き缶が握れない人のために飲めるようにする自助具(把手)など、ダウンロードすれば誰でも作れるようになっています。3Dプリンターは、失敗したらまたすぐ作るということが繰り返しできます。

今後はここをみんなでDIY、セルフリノベで改修します。3Dプリンターやレーザーカッターなど機材を置き、時間貸しという形でものづくりをしたい人が交流できる場所にしたいと考えています。オープンは3月の予定です。

「いかにして人間と地球環境と共に考慮されたファッションブランドを実現しうるのか」という大きな問いに答えられるように

田中:
私はSOLITというブランドを運営しています。キャッチコピーは「着たいも着れるも実現したい」です。会社を説明するとき、ビジョンやミッションについて話すことが多いと思うのですが、私たちはビジョンもミッションも明確には持っていません。どちらかというと大きな問いを持っています。「いかにして人間と地球環境と共に考慮されたファッションブランドを実現しうるのか」という問いに答えられるように、チームメンバーみんなで日々アップデートし続けています。

現時点での私たちの答えとして「オール・インクルーシブ・ファッションサービス(All inclusive fashion service)」というものを掲げています。多様な人間も、自然も、地球も取り残さないファッションサービス、最近の言葉で言うと「サステナビリティ」と「インクルーシブ」の掛け合わせでやろうとしています。

黒田さんと会社名が似てるのですが、私たちは「SOLIT株式会社」です。2020年9月15日に立ち上げて、従業員4名とプロボノというプロフェッショナルなボランティア40名で運営しています。チームは、半分が心や体、身体の可動域の専門家である医療・福祉従事者で、もう半分が企画やPR、マーケティングを行うビジネスセクターの人たちです。

私たちは受注生産という仕組みとセミパーソナライズ、そしてインクルーシブデザインというデザインの手法を掛け合わせ、お金を作って持続的な活動にしています。
私たちのプロダクトのターゲットは、着たい服があるのに着れなかった経験のある特徴的な体型の方、そして誰でも、となっています。みなさんが一番イメージしやすいのは、車いすユーザーの方かもしれません。

たとえば脊髄損傷の元パラリンピックの選手の方は、指に麻痺があり、車いすの自走はできますが、指を動かすことはすごく難しい。ボタンのある服は着にくかったり、ひとりでジャケットを着るには時間がかかってしまい、パーカーやジャージばかりになってしまっていたそうです。でもSOLITはご自身で着られるので、よく着てくださっています。

他にも、ダウン症の方で試着会に来てくださった方は、約130センチくらいから身長が伸びづらくなるんですが、ご本人の希望として「20歳なので大人っぽい服を着たい」というもの。けれど130センチだと選択肢は子ども服になってしまう。日本の子ども服は発色のいいものしかなかったり、花柄だったりして、彼女が着たいものではありませんでした。彼女は自分のサイズに合った大人っぽい服を着たいと、今はSOLITを着てくださっています。

最近のパラリンピックでご存知かもしれませんが、世界の人口の約10%、6億5,000万人が障がいを抱えているといわれています。さらに障がいのある方の10%が車いすユーザーだそうです。

足が動かなかったり、指に麻痺があったりする方の多くにとって、ボタンのある服は着づらい、ジャケットは着づらいものです。私たちはそれを解決したいと、車いすユーザーでも、どんな障がいでも、どんなジェンダーだったとしても着たい服が着れるようにと思ってアイテムを作りました。

私たち自身もS・M・Lなどのサイズ展開だと、骨格が大きかったり、腕が太かったりで既存のお店だと着れるものがなかったりします。逆に日本人的にいうと細く華奢で、レディースのSサイズでも貧相に見えてしまう人もいます。
このように、自分が好きなものを着ることができていないのは、障がいの有無には関係ないことなのです。

私たちのプロダクトの特徴は、部位ごとにカスタマイズ可能なインクルーシブファッションです。洋服は布をパーツごとに切って縫い合わせて形にします。SOLITは右腕、胴体、左腕、右足、左足でサイズ、仕様、丈を選べます。片方だけ太い方だったりしても自分でサイズを調整したり、仕様を選んだりできます。
ぱっと見のデザインは一緒ですが、自分に合った形に、作る段階から調整可能です。細身で身長高めの人も、体の大きい人も、そもそも座った姿勢がベースとなっている体型の人も、同じデザインの服だけれども、カスタマイズすることでそれぞれが着られるようになります。

特徴的な選択肢として、ジャケットの袖口にリブを付けるということもできます。料理をするとき、アルコールをつけるときにも便利で、車いすユーザーで自走する人の場合、車輪に袖口が擦れて黒くなったり、穴が空いてしまったりします。アンケートをとると、おしゃれな服が着づらいという課題感があったので、腕まくりを前提としたデザインを考えました。

ボタンについても、一見、普通のボタンですが、実は磁石でできているマグネットボタンに変えることもできます。視覚に障害があってどこにボタンがあるのかわからない方や、指が動かずボタンをつかみ、ホールに入れて、取る動作が難しい方、授乳される方にとっても楽にボタンの開け締めができます。

ある方は「これでようやく娘に会いに行けるわ」と言ってくれたり、他にも、「もうファッションをあきらめなくていいんだ」と言ってくれたり、「いつもパーカーだからデートに誘いづらかったんだよね。ようやくジャケット着れるからデートに出かけてくるわ」とおっしゃる方もいます。

ファッションは着れる着れないのレベルのものではありません。行ける場所が増えたり、できることが増えたりという社会参加のひとつ。ファッションはファッションだけにあらずと思っています。

また、私たちも環境負荷のないようにしたいと考え、「必要な人に必要なものを必要な分だけ」と決めています。先ほどの3Dプリンターの要素とすごく近いのですが、今までのファッション産業は大量生産、大量消費、大量廃棄でした。トレンドを決める人がいて、そのトレンドに合わせてデザイナーや商社が企画し、大量に作るから単価が安くなり、大量に作って大量に廃棄していました。

SOLITは企画段階から必要とするものしかデザインせず、依頼を受けてからようやく布を切り出すので、そもそも廃棄を前提としていません。また、少し汚れたり、穴が空いたりしたら、送ってもらってリペア・リメイクをして送り返すという、できる限り長く使ってもらえるような仕組みにしています。

1年目は、とにかくいろんな人に着てもらい、データを集めていました。2年目となる今は、医療・福祉のフィールドにこのノウハウを渡し、その後医療・福祉だけでなく自動車、建物、文具などいろいろな事業者と連携して、誰でも選択肢がたくさんある社会をつくりたいという野望を抱いています。実は私たちはアパレルブランドというだけではなく、オール・インクルーシブ(All inclusive)な社会の実現をするための会社なのです。

現在、入院・通院患者の方々がどういう形状の服だと着やすくなるのか、着脱の時間が減ることでどういう社会参加が出来るのかという研究を病院と一緒に行っています。今後は世界初のファッション外来のようなものを作りたいと思っています。

会社名の「SOLIT」は英語のスラングで「めちゃくちゃ素敵」という意味です。障がいやセクシャリティ、信仰、体型、価値観に関係なく、「あなたはそのままでSOLITなんだよ」と思っています。

アプローチ方法はそれぞれ異なっているが、考え方が似ていた二人

参加者: お二人は知り合いだったのですか?

田中: 共通の知人に黒田さんを紹介していただきました。お互い、医療・福祉の分野で、私はファッションからのアプローチ、黒田さんは自助具としてのアプローチと、それぞれアプローチ方法は異なっていますが実現したいことや、できる限り廃棄を前提としない生産方法など、かなり仕組みは似ています。

黒田: その知人の方は、僕の今に至る経緯も知っていて、田中さんと僕は考え方が似ているし、場所はあるしということで声をかけていただきました。

黒田: 話は戻るのですが、どういう過程で1,600通り以上の組み合わせでカスタマイズすることにしたのですか?

田中: 一番初めは、パンフレットによく載っている、私の同級生で車いすユーザーの友人のために一着作りました。ヒアリングしたり、いろいろな施設に足を運んで、たくさん試着してもらううち、全然サイズが足りないことがわかりました。それで自分で部位ごとに選べるようにしようと考えたのです。

黒田: 車いすの方や半身麻痺、いろいろな症例の方を巻き込んでいって一緒につくったということですか?

田中: そうですね。ものづくりは、開発のときにデザイナーがデザインをして、「これでお願い」と工場に依頼をして終わります。でもSOLITでは企画段階のミーティングに車いすユーザー、アトピー性皮膚炎の方、セクシャルマイノリティの方、ムスリムの方など、できる限り多様な人を巻き込んで、テーブルにいるみんなが意見を言える状態にしました。そのような状況で開発したため、誰かのためだけにはならなかったのです。

黒田: いろいろな症例の方の意見を吸い上げると、どこまでそれを反映させるのか、難しいですね。その折り合いのつけ方は? 取り入れたいけれど、ちょっとこっちがあるから…というのも出てくると思うのですが。まだまだ取り入れられる余地はありますか?

田中: 気持ちはまだ「バージョン1」という感じです。自分である程度経済活動ができる、社会活動ができる脊髄損傷、脳性麻痺の方へはフォーカスできてきました。今回はこのターゲット向けの商品を作るという感じです。
重度の障がいの方は今のSOLITではまだ着づらいし、アースカラーだと土や砂の色に見えるから軍隊を経験している精神疾患の人は恐怖に感じるなど、全方向にフォーカスしようとすると、現状ではお手上げです。これから徐々に対応できるように考えています。

SOLITでは大手のファストファッションブランドよりは高く、大手のセレクトショップよりは安くという価格設定にしています。完璧に自分にフィットして、自分の好きな色で好きな形だったらフルオーダーでお金をかけてもらうことになります。

参加者: 絶妙な価格設定ですね。それなら買いたいと思いました。

参加者: たとえばLサイズとMサイズを縫い合わせたとき、ズレができるということはないのですか?

田中: そのためにうちの服にはマチがあります。ジャケットには脇にマチがあり、これで調整しています。一応、2〜3サイズの差だとそんなに違和感は出ないですが、5サイズ以上異なると”ひだ”ができます。そこはその都度微調整します。

ECのみでの販売のハードルを減らすために

黒田: 普段の販売はECですか? そうなるとサイズはどうやって測ればいいのでしょうか?

田中:たとえばジャケットのサイズがわからないとします。まずサイズ表から自分のサイズを探します。SOLIT7という通常Lサイズくらいの大きさだとしても普段腕がきついなとか、その場合サイズはどうしたらいいかわかるように書いてあります。採寸ガイドの動画では、「ここからここまで測ってね」とご案内しています。それでもわかりづらい人にはLINEで相談が可能です。

あとは「あなたにぴったりのサイズを知る」というオンラインサイズフィッティングシステムを導入していて、身長などを入力し、普段どこのメーカーのどのサイズを着ているかを選ぶと、「あなたはSOLITではこのサイズが合いますよ」と表示されます。でも、これでも大変という人もいるので、そういう場合は試着会に来ていただいたり、家が近い方だと家まで行って測らせていただいたりします。
一回買ってしまえばデータがあるので、色違いをどんどん選ばれる方もいるのですが、最初のハードルが高いとよく言われます。

オンラインサイズフィッティングシステムの結果画面

参加者: ネットで買うのに慣れている人じゃないと難しいですね。どういう方が買われるのですか?

田中: 共感して、ほかでシャツ買うよりはSOLITで、と応援購入してくださる方が半分くらいです。残り半分は、実際に着たい服が着れない方が課題解決のために買われます。病院の医師や、パートナーから教えてもらうなど、本人が知ろうとするというよりも「あなた、これがいいんじゃない」と言われて買う方が多いようです。

参加者: 先ほどの話の中で、身体が平均とちょっと違うというのがありました。こういう人は周りにいっぱいいます。車いすだからとかだけではなく、そういう既存の服が合わない人に「こういうのあるよ」と教えたくなりました。

参加者: これらのアイテムは家で洗濯できますか?

田中: できます。ただ、できるかぎり洗濯用ネットに入れた方がいいです。形状記憶ではないですが、洗った後、吊り干しすればシワにならないようになっています。

商品発送や梱包時のこだわり

黒田: サイトを見ていいなと思ったのが、買った商品が送られてくるときに、まずビニール袋に入っていないこと。そして緩衝材として端切れを使っていることです。

田中: 緩衝材に使用している布は、工場で捨てられる予定だったものを切って包んでいます。

参加者: いいですね、その布も欲しい。残したくなりますね。何かに使いたい。

田中: ハンカチや手ぬぐいにしている人もいます。

黒田: 緩衝材の布に点線だけシルクスクリーンで印刷して、ミシン持っている人だったら何か作れるとかいいかもしれないですね。

参加者: その後のストーリーがあるの、いいですね。

黒田: 細かいところまで徹底されているのがすごいですね。

田中: ひとつひとつ改善している感じです。この配送に伴う環境負荷の軽減については、インターン生が考えてくれています。最近、送料は変わらないけれど環境負荷が下がるからということで、1枚だけ送るときは紙袋に変えてくれました。2枚以上購入の方にはダンボールです。

SOLIT発送時の紙袋と段ボール

参加者: 会社の取り組み自体の認知を上げていくような方法はどのように進めていくのでしょうか?

黒田: インスタやFacebookで発信しても、近所の人は見ないので、どうがんばっても届きません。
LINEなら、隣のおじいちゃんでもやっているので近所へも届きます。今度、町内の回覧板にイベントのチラシを差し込もうと思っています。そういう地道なところからやっていかないと、本当に伝えたい人には伝わらないですね。

田中: 私たちは東京を拠点に全国に行ってるので、遠くに飛ばすことは得意なのですが、近くに飛ばせません。トンカンテラスはここに場があるから何かあったら来てくれるけれど、私たちにはオンラインしかない。本当に必要な人に届けるのはすごく難しいです。それはずっと課題で、まだ解決できていません。

今は、SOLIT STANDという各地で共感する仲間が提供してくれたSOLITを触れることができる場所に、4アイテムを置かせてもらい、そこへご案内しています。病院やカフェなど全国で5か所あり、プロボノべースでやっています。

病院はターゲットの人数が多いのでアプローチしやすいのですが、このブランドの理想は障がい者用の服や福祉用具ではなく、あくまでファッションであり、誰でも着れるものとして見てもらうこと。だから本当はカフェのような場所が理想です。

ストーリーを組んで共有できる協力者

黒田: 僕はひとりの株式会社なのですが、今後TONKAN terrace などの活動を広げるために協力者を募る必要性を感じています。とりあえずお金が欲しい人ではなく、ストーリーをくんで共有できる人に来てもらいたい。SOLITはたくさんの協力者がいると思うのですが、どういう形で募ったり、工夫したりしていることはありますか?

田中: SNSの投稿を見て連絡をくれる人が一番多いです。もしくは知り合いが紹介してくれた人。基本オープンに求人はしていません。信頼関係ゼロの状態で面接を1回しても、その人のことはわからないですから。信頼しているルートでの受け入れが基本です。SNSは共感がベースにあり、記事も全部読んだ上で「好きです」と言われるので「じゃあいいかな」と、まずは1か月だけ入ってもらい、相性がよければ続ける形をとっています。

参加者: 相性が良くなかったというケースもありますか?

田中: あります。差別的な発言をする人や、価値観を押し付けるような人だとやめてもらったりします。

参加者: 正社員とプロボノの違いは?

田中: 教えられて何かアクションをするのは無償インターンかアルバイトです。正規雇用に関しては、法定勤務時間の月160時間のうち50%以上をSOLITにコミットできる人は社員契約も可能にしています。私がフルコミット、もうひとりの社員は50%コミットです。その人は本業は医療・福祉従事者で、SOLITから50%給与があって、病院や施設、患者さんご本人から50%支払われて生活を成り立たせています。ほかのメンバーは業務委託です。

黒田: 会社員を10年やってきたので、正社員が当たり前で副業人材などは考えていませんでした。すごく柔軟な働き方を提供しているのですね。

田中: 現代においては、正社員雇用された会社が潰れてしまうということも少なくないので、正社員雇用されたからといって安心はできないです。だったらリスクを分散させる両方副業の方が安全ではないかと思ったりします。50%潰れても50%残る可能性をつくった方が、私は人生としては安心かなと思います。

うちのメンバーは基本的にフルコミットは誰も入れないと決めています。SOLITが潰れても生きていけるようにしておいてもらいたいと考えています。

※1:ファブラボは、デジタルからアナログまでの多様な工作機械を備えた、実験的な市民工房のネットワーク。個人による自由なものづくりの可能性を拡げ、「自分たちの使うものを、使う人自身が作る文化」を醸成することを目指している。ファブラボ品川は一般の方々に向けて公開されているものづくりのためのスペース。所定の機材講習(有料) を経た方々は自由に使うことができる。(要事前予約)ーファブラボ品川公式サイトより

TONKAN terrace(トンカンテラス)について

株式会社ソリッドラボ代表 黒田悠生さんが運営する、事業部のひとつ。「ものづくりを通して、あらゆる人が集い、交流する場所」として活動している。

福井県福井市高木地区にある、3Dプリンターや大工道具などを使い、子どもも大人も、障害の有無に関わらず、ものづくりを通して人が集い、交流する地域の拠点です。

今回まとめてくれた、田中耿(たなかあき)さんについて

田中耿(たなかあき):福井県鯖江市在住。複業家(ライター・フライス盤加工・カフェ店員・惣菜屋のイベント出店・本屋店番など)。旅しながら暮らせる仕事付きシェアハウスを各地に設けられないか思案中。お仕事のご依頼はDMもしくはMessengerへ。

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