このJOURNALでは、SOLITのバンクーバーファッションコレクションの挑戦に、共に立ち上がろうとしてくださっている企業が、どうして協力すると決めてくださったのか、その背景にある想いをインタビュー形式でまとめています。
ぜひ読んでくださった皆さんも、ともに立ち上がる仲間になっていただけたら嬉しいです。
今回は、株式会社Hub.craft の山下 史さんへのインタビューです。
今回のインタビューを受けてくれた方:
株式会社Hub.craft 山下 史さん
2023年のドイツiF DESIGN AWARD受賞時のドキュメンタリー撮影(【ショートドキュメンタリー】SOLIT! 明日に差す光 / SOLIT! A Bright light of hope)に引き続き、今回VFWに挑むSOLITのドキュメンタリーを制作いただけることになりました。
SOLITを知ったきっかけを教えてください。
2016年の熊本地震以降、SOLIT代表の田中美咲さんと繋がりました。当時、一般社団法人防災ガールを運営していた田中さんが、次への移行としてSOLITを立ち上げ、周りのクリエイターがロゴを制作してくれて・・・という流れで徐々に繋がりが深くなり、ドイツのiF DESIGN AWARDの授賞式のドキュメンタリー作成を担うことになりました。
ドイツのiF DESIGN AWARDの授賞式のドキュメンタリー制作は、本当に思いつきでした(笑)。「今を残す」ということがとても大事だと思っており、出来そうで、なかなか出来ないことだと思っています。コロナ禍に受賞して授賞式に行くということを決断した田中さんに、どこもメディアがついて行かないと聞き、国としての損失なんじゃないかと感じました。自分達のような小さな会社かもしれないけれど、撮影していくべきだと思いました。
いざ撮影して、映像を見て、田中さんやSOLITの取り組みは「本物だ・・・」と思いました。その後、カナダのバンクーバーファッションウィークへの招待出場が決まったことを聞いて、
「ドイツのあと、カナダにも行くんだ・・・」
とびっくりしたのを覚えています。だいたいの団体が大きなイベントやったあとに少し落ち着くはずだけれど、SOLITはそこでモデルを選び、新たな挑戦をしている。しかも、バージョンアップして。なんだか「これは撮らないと損だ」と感じたんです。このような経緯で、バンクーバーファッションウィークに向けたSOLITの挑戦について、ドキュメンタリー制作をすることになりました。
僕たちは、儲かっているわけではないけれど、交通費なども全て自腹だけれど、自分の会社としては大きな額だけど・・・、それでもやるべきだと思いました。もちろん、いいものを作るということは大事だけど、あとはうちの会社の体力的にはこのくらいの金額しか使えないよ!ということを調整しながら話しています。
SOLITのどのような部分に共感してくださっているのでしょうか。
田中さんの動き方に共感している、と言えます。SOLITが掲げるインクルーシブというようなことはわかるけれど、やはりそこまで言い切るのは難しいと思うんです。特に日本人は100%完璧には伝えきらないのが良さであり、悪さでもあると思います。
ただ、田中さんの発言を聞いたり、行動を見て、この人は自分で言ったことを回収しないといけないんだ。。。と思ったんです。ここまで大きなことを語り、人を巻き込んでいる彼女は、その発言を超えたからかに話すゆえに責任を取りに行っているように見えます。いい加減にせず、それをちゃんと回収しに行くという、自ら重荷を背負うような感じで。そして田中さんの周囲にいる人も、似たような志の人が多いのだとおもいます。
単純に動きを追っていきたいと思ったのは、そういう思いからです。いま田中さんが活動しているのはSOLITで、だからSOLITを追いますが、純粋に代表の田中さんの動き方を追っていきたいと思っています。
もしかするとSOLITの理念としては違うかもしれないけれど。
Hub.craftは「つながり」を作る会社
Hub.craftは繋がりを作る会社です。地域とのつながり、可能性をつなぐ、好奇心をつなぎ続ける、そう決めています。
私たちの持つ、映像・音楽・文章・イラストなどの技術を使って、地域が抱えている課題を解決していくのですが、なにより私たちの信念としてお金よりも大事なことはその仕事が楽しいかどうか、というポイントです。私たちは常に、面白いと感じた取り組みに意欲的に参加しようと決めています。
そういう背景もあって、Hub.craft=つないで・つくる、という意味合いで会社名をつくっています。ゼロから作るのではなく、材料あってこそつなぎあわせてつくっていく。
2017年に創業しましたが、2014年から個人事業としてはじめていたので、今年で創業10年になります。もともと私は、放送局でエンジニアとして勤めていましたが、熊本地震などもあって活動を変えました。
熊本はマスメディアが強い。だからこそ、僕たちはweb専門の動画会社として展開することに全振りしています。
また、私たちはユニットと化してミッションを遂行して行くスタイルにしており、社員をほぼ作らないようにしています。チーム構成としては、社員が今年入って6人になりました。代表である私自身も音響技術者で、SOLITのドキュメンタリー映画を撮影した松田は構成作家、最近新卒2名も入りました。実は社員の中にはカメラマンは一人もいなく、管理職は外注しています。部長・主任なども外注。働き方も田舎の中では新しい形だとおもいます。0から100まで教えるというよりも、働きやすい環境を作るということに注力しています。
株式会社Hub.craft では、どのような社会の実現を目指していますか。
効率が良い社会になればいいと思っています。
例えば、私たちは「まちづくり」に関係する仕事をよくやっているんですが、効率が悪いと思うことがあります。まちづくりの「まち」の最小の形は個人、家族、グループ。それが、まとまって街になって行く中で、バラバラなものを一つのお皿に入れようとすることが、「まちづくり」だとしたら、すごく効率が悪い。また、街の課題に対して国はある程度の予算はつけるけれど、国が重要課題だと判断したものであるのに地域の行政は予算をつけない、協力しきれないなどいろいろとルールや役割が複雑になっている。
その複雑なものがたくさんある中で、私たちは「ご飯が食べれるように仕事をしよう」、「人の役に立とう」、この2つのシンプルなルールを会社では持っています。もちろん個々に欲はあるかもしれないけれど、それでも最低限の部分はしっかり明確に、シンプルにして行くべきだと思う。
だから、どんな社会の実現を望むかというと、「シンプルになればいいのに。」そう思っています。細分化されすぎているから悪用して行く人が生まれたりしている。逆にシンプルになることで、だれかを区別・差別することのないようにしたほうがいいのではないか、と。
現在、より良い社会の実現に向けて、取り組んでることや注力していることを教えてください。
会社としては、社員やチームメンバーに対して、報酬や補助を「欲しいもの」で貸与しています。新しい機材でよりよい制作をしたいという人がいたら、プレゼンしてもらい、許可を出す。休みが取りたい人や出張に行きたい人などさまざまなので、固定化するのではなく、今困っていることを今解決するということをやっていく。制度化するのではなく。それがシンプルでわかりやすいのだと思っています。
取り組む中で、難しいと感じる部分や課題と感じる部分はありますか。
文化的、感情的なものについて捉えていくのは難しいなと感じます。自分がやっているのは基本的には「ライスワーク」で、ライフワークではない。チームのメンタルのケアなどは必要だけれど、あえてやっていないとも言えます。なによりも信頼関係がある上で、それぞれの選択を尊重し、その中で生じる不利益などがあれば相談するが、押し付けることをしないと決めている。ただ、自分自身で、気を使い切れていないことがあるかもしれないなとも思う。本人から伝えてくれたら聞くけれど、こちらからセンシティブなことについて声をかけるのは難しさを感じています。
SOLITの今後に期待していることは?
現状について、いろんなデータをだされているけれど、一発で理解しづらいと感じます。難しい内容を扱っているのでしかたがないけれど。それだから興味を持って調べようとする人がいるのでいいのかもしれない。でも、一瞬ではわかりにくい。だからこそ誰でもわかるような映像が必要なのだと思っています。
SOLITがあたりまえになればいいなとおもっている。マイノリティの課題解決をもっとしていってほしい。そのテーマに触れていっていい雰囲気を作って欲しい、そう期待しています。
最後にSOLITのJOURNALを見てくれている方へ一言お願いします。
課題解決といっている時点で、そこには課題がある。課題解決を議論しなくていいような世の中にしていきませんか?と問いかけたいです。課題のない世の中にしていきましょう。課題を課題と思わずに、シンプルにしていきませんか?
課題に対しての取り組みが当たり前になればいいと思う。
株式会社Hub.craft について
つながりをつくる熊本の映像制作会社。
動画企画・制作・監修・音響など、個の才能をつなげてカタチに。Hub.craftは映像・音楽・文章・イラストなどの技術を使って、学会配信サポートや、地域が抱えている課題を解決します。
Twitter:https://twitter.com/Hubcraftinc1