私たちはこれまで、多くの企業や障害当事者と共にインクルーシブデザインや組織づくりに取り組んできました。その中で繰り返し耳にしたのは、『就職はできても、その先のキャリアが見えない』という声でした。
近年、日本における障害者雇用は大きな転換期を迎えています。
障害者差別解消法の施行や合理的配慮の義務化、法定雇用率の段階的な引き上げなどを背景に、多くの企業で障害者雇用への取り組みが進み、民間企業における雇用者数は毎年過去最高を更新しています。
これは、行政・企業・当事者をはじめ、多くの関係者が積み重ねてきた努力の成果であり、日本社会にとって大きな前進と言えます。しかし、その一方で私たちは、次のような問いを持つようになりました。「雇用は増えた。その先はどうなっているのだろうか。」
「雇うこと」がゴールになっていないだろうか
法定雇用率の達成に向けた取り組みが進む一方で、企業現場では新たな課題も見え始めています。
例えば、
- キャリア形成について相談できる機会が少ない
- 評価基準が分かりにくい
- 業務の幅が広がらない
- 合理的配慮が「負担を減らすこと」に留まり、能力を発揮するための環境づくりまで十分に至っていない
こうした課題は、一部企業だけの話ではありません。むしろ、障害者雇用に真剣に取り組んできた企業だからこそ直面している、「次のステージ」の課題とも言えます。私たちは、障害者雇用の"量"が問われてきた時代から、障害者インクルージョンの"質"が問われる時代へ移りつつあると考えています。
「障害者雇用」ではなく、「障害者インクルージョン」を考える
SOLITでは、障害を個人の問題ではなく、社会の側に存在する障壁として捉える「社会モデル」の考え方を大切にしています。だからこそ、障害者雇用を単なる法令対応や福祉施策としてではなく、「誰もが能力を発揮し、成長し、評価される組織をどうつくるか」という経営や組織づくりのテーマとして考える必要があると考えています。
また、障害のある人を「かわいそうだから支援する対象」として見るのでも、「特別な才能を持つ人」として特別視するのでもなく、同じ社会で共に働き、共に生きる一人の人として向き合うこと。そんなフラットな共生感覚を社会全体で育てていくことも、本プロジェクトの重要なテーマです。
Social Issue Lab × SOLITによる共同調査を始動
こうした課題意識のもと、SOLITはQO株式会社が運営する、社会課題に光を当てる研究機関「Social Issue Lab」(以下「SIL」)と共同で「障害者インクルージョン調査」を始動しました。
本調査では、
- 障害者雇用におけるキャリア形成
- 評価制度
- 合理的配慮
- 職域開拓
- 働く当事者の実態
などについて、定量調査・定性調査の両面から分析を行います。また、日本国内外における先進的な障害者インクルージョンの実践事例も参考にしながら、日本企業が今後どのような方向性を目指すべきかを考察していきます。
調査を「公開して終わり」にしないために
SOLITでは、この調査をレポートとして発表して終わるものにはしたくありません。
- 調査結果を起点として、
- メディアとの対話
- 企業担当者向け勉強会
- 実践的な学びの場である「DEI Studio」
- 今後の政策提言
などへとつなげながら、日本における障害者インクルージョンの議論と実践を少しずつ前に進めていきたいと考えています。
本プロジェクトの最新情報
本プロジェクトの詳細や今後公開される調査結果については、QO株式会社のプレスリリースをご覧ください。
QO株式会社 プレスリリース(共同調査開始のお知らせ)こちらから
最後に
障害者雇用率は、日本社会を大きく前進させてきた重要な制度です。しかし、私たちが本当に目指したいのは、雇用率を達成することだけではありません。一人ひとりが適性を活かし、挑戦し、成長し、正当に評価されること。障害の有無にかかわらず、誰もが当たり前に働き、共に社会をつくること。その実現に向けた次の一歩として、この調査を多くの皆さまと共有していきたいと思います。