G.F.G.S.代表 小栁 雄一郎さんと語るファッションを通して実現したい循環のサイクル/ INTERVIEW

G.F.G.S.代表 小栁 雄一郎さんと語るファッションを通して実現したい循環のサイクル/ INTERVIEW

目次

2022年2月2日、新潟のMOYORe:で「ファッション」という「切り口で今の社会を捉えてみるトークイベント(https://www.moyore-niigata.jp/event/detail.php?id=124)を開催しました。MOYORe:を運営されている株式会社リビタの原田さんと新潟県加茂市のファクトリーメーカー「G.F.G.S.」代表の小栁雄一郎さんとSOLITの代表田中美咲との対談のご内容をご紹介させていただきます。

このイベントについて

新潟のMOYORe:で開催されたこのイベントでは、ものづくりの現場に立ち、受注生産やパーソナライズという手法で、人にも環境にも経済にも社会にも、持続可能な循環型社会を目指す活動をしているという共通点のある「G.F.G.S.」と「SOLIT」のそれぞれの取り組みや、現在の課題や未来のこと、ファッションを通して伝えたいメッセージなどをお話いただきました。

二人の共通点や、価値観などを覗き見つつ、さっそくインタビューをみてみましょう!

INTERVIEW

小栁(G.F.G.S.): SOLITの生産方法が、同じ「受注生産」と聞いて、田中さんに聞きたかったんです。生産されている工場はカスタマイズが多いと大変じゃないですか?

田中(SOLIT): 大変といえば大変です。今は中国の無錫の工場にお願いしていますが、運命的な出会いだったと思っています。もともとは大量生産をベースにしていた工場だったのですが、その工場自体も、大量生産・大量消費はいつか終わりが来ると考えていたようです。だから、こうして必要な人に必要なものだけつくる「受注生産」という生産方法に一緒にチャレンジできることが嬉しいとおっしゃってくれたんです。正直なところ、現時点では大量生産のほうが、利益が出るはずなんです。でも、未来のためにSOLITと一緒にチャレンジしてみたいという意思決定をしてくださったんです。

小栁(G.F.G.S.): 僕らも受注生産でボーダーカットソーを生産していて、「G.F.G.S.」というブランドとファクトリーを両方やっているので、「日々製作すること」が大変という実感があるので、聞いてみたかったんです。実際、工場さんが理解があるというのはすごくいいことだし、国内でも、これから理解ある工場は出てくると思うし、出てきてほしいですよね。

田中(SOLIT): 今の無錫の工場もすごく親身になってくださったり、すごく大好きなんですが、出来る限り環境に配慮したいと思っている私達は、本来は出来る限り飛行機も船も使いたくないんです。出来る限り石油由来のものを何も使いたくないと考えているので、中国からの輸送コスト(環境負荷のコスト)をどれだけ下げれるかとチーム内でいつも議論してます。さらに、できれば日本で連携できる工場を探したいと、ずっと思っています。

ー持続可能に働ける環境整備が大事。1ヶ月間の週休3日間にチャレンジ。

小栁(G.F.G.S.): そういった工場さんが仕組みを理解があるところと組んでいることは心強いだろうな。
僕らはボーダーカットソーしかやってないが、制作するスタッフを維持することや、育てるということは、毎年直面する課題です。だから、持続可能な会社にするためには持続可能に働いてくださる環境整備が大事だと考えている。例えば、残業なし、週休二日制、フレックスタイム制などを取り入れています。今月からとりあえず、1ヶ月間の週休3日にチャレンジしている。そのため、残りの4日間がとても濃密な時間となっていますよ。

職場環境を整えないと、いい人材が集まらない。せっかく学校を卒業した方がいるのに働く場所がないのも問題だと思う。そういった課題も今後は、解決していきたい。

田中(SOLIT): この完全受注生産という生産方法を理解してくれる工場さんがいなかったら、SOLITも何も出来ていなく、ただの夢で終わっていたので、ご縁があって本当に良かったと思います。

ーずっと着続けたいと思う服が、翌年生産されていないことが多かった。

田中(SOLIT): SOLITは環境への配慮と人への配慮のバランスが難しいと思っています。何か「もの」を生み出す場合、その時点で環境にも人にも負荷がかかっているという大前提に立つと、このまま何かを作り続けるという選択肢はいいのだろうかと毎回悩むんです。その部分を小栁さんはどう考えていますか。

小栁(G.F.G.S.): 元々、ボーダーカットソーを作り始めた理由は、自分が欲しい商品や、ずっと着続けたいと思う服が翌年生産されないことが、ファッションの現場で多かったから。ファッションのサイクルに疑問を感じていました。そこで、まずは自分の着たいと思う定番のボーダーカットソーから作ってみようという発想になったんです。

小栁(G.F.G.S.): 今、そうはいいながら、春夏のコラボ商品を作ったりとか、先を見て製作しなければならないのがファッションの世界。もし、私達のような受注生産かつ、即時性の高いような服を作っていけたら、ニーズに答えられるのではないかと考えているんですよね。

「これから夏じゃん」というときには夏物セールが終わっている、そんなの嫌じゃないですか。なかなか難しいけれど、そんな循環から抜け出して行きたいと思っている。

小栁(G.F.G.S.): 実は、前職が刃物メーカーで、一日約600個生産していたのですが、「一体誰が買うんだろう」と思って働いていたんです。それが今から考えると20年前。その時からたくさん生産し過ぎているのではないかと思っていたが、日本もようやくSDGsが浸透し始めてきた。僕たちは受注生産で1着1着、生地から作っているので、在庫がありません。大量生産・大量消費の時代から、僕たちはシステムを変えるという宿命を持ってスタートしています。今のボーダーカットソーの受注生産をずっと続けてきて良かったと思っているので、これからも続けていきたいですね。

ー必要な人に必要な分だけ作ると決めている

小栁(G.F.G.S.): SOLITはセールや卸をやったりしているの?

田中(SOLIT): 基本的にはないです。あったとしても本当に必要なところ、本当に必要な人に対してのみ対応しています。。例えば、病院の入院患者さんは絶対に服は必要なので、病院と連携して卸す場合はあるのですが、趣味のための服や、あったら買うかなというような気持ちの方にたくさんお渡しするということは基本はしないと決めています。

小栁(G.F.G.S.): ファッションって一部分のおしゃれ番長が決めるようなものではないと思っているから、そういう流れもあまり好きではなかった。某有名雑誌にでてくるようなご意見番みたいな方や、ムードや流行を作るようなことはどうなんだろう、といつも思っていた。 もっといろんなところにSOLITの服とか僕らのボーダーカットソーの服が入っていけたらいい。僕は今後も、ボーダーを作り続けていきたいと思っている。

小栁(G.F.G.S.): SOLITではアイテムは増えそうですか?

田中(SOLIT): いつも悩んでいて、アイテム数自体は増やしたくないと思っているのですが、とはいえ、「夏に着れる服も作ってくれないと着れる服がないよー」とおっしゃっていただいたこともあり、「そうか、選択肢を広めたいと言っている私達が選択肢を狭めているのか」と気づかされました。その時に、夏服分だけは最低作ろうという意思決定をしました。

原田(MOYORe:): ここまで使っていただく相手のことを想って製作される服に、なかなか出会えたことはないので、服を買うときには購入者も意識的に気づいていかないといけないなと思いました。 例えば、茶道などでも、もてなしているのに、もてなされている側が作法を知らないと、何も気づけないと思っているんです。今日のお二人のお話を聞いて、作り手側の考え・想いが伝わると、さらに、購入する側の意識も高まって来るのかなと思いました。
その中でも、続けるために環境を整えていくという小柳さんの話もとても印象的でした。

ー製品化までに1商品あたり最低100人にヒアリング

原田(MOYORe:): SOLITは、様々な人の要望に答えるために、様々な方にヒアリングされるとお聞きしました。

田中(SOLIT): ヒアリングの量はかなりの量をさせていただいていると思います。1商品あたり、最低100人にはアンケートかヒアリングを実施していて、特に障害のある方やセクシャルマイノリティの方だったり服の選択肢が少ないとご本人がおっしゃられる方には、これで本当にその方の価値観は傷けられないか、この形状は何かの価値観の押し付けになっていないかなども合わせて考えます。

障害の度合いも人それぞれで、障害の度合いによっても着脱しやすい服の形は異なるので、試作段階では、様々な障害の方、様々な年齢の方、様々な体型の方にとにかくたくさん着ていただきます。ある人には満足いただけたけど、別の方には満足していただけなかったー!という結果がでると、また作り直しという流れを1商品あたり、9回くらいプロトタイプを作成し、ようやく製品化されるというとても長い道のりでした。

ーボーダーカットソーのデザイナーはお客さん

原田(MOYORe:): 小柳さんのECサイトではたくさんの組み合わせ・カスタマイズができるようになっていますが、リリースするときにはどのように考えていたのでしょうか?

小栁(G.F.G.S.): 仕組みとコンセプト有りきでしたね。このように見せるんだと決めてた部分もあったので、たまたまWEB上で表現してくれる相棒が側にいて、その彼がこの仕組みを作って提案してくれたことが始まりです。ミシンを踏める人より、最初にWEBデザイナーと一緒にスタートしたというのが、出発点としてよかった点かもしれないですね。

僕は、デザイナーはお客さんだと思っているので、僕は型と仕組みを作ることが大事だと思っている。今も日々お客さんが、リアルやオンラインで色やボーダーのピッチを選ぶとゆう選択をされている。「毎日ボーダーばかり作ってて飽きないですか?」とよく言われるけど、全く飽きない。毎回毎回、異なる組み合わせがあったり、同じ配色の時もあったりするのを見ると、、1アイテムだけでこれだけ多様性があれば、まだまだやれることは、たくさんあるなと思っている。毎日新鮮なんです。これはやっていないとわからないかもしれないです。

ー「自分が出来ないことを出来る人」を仲間に入れていく

原田(MOYORe:): 田中さんとSOLITに関わっている方の多様さがすごくユニークに感じました。どんなことからあのような発想になったのでしょうか?

田中(SOLIT): ファッションも福祉も経験がなかったのですが、でも必要だとわかっている。最初は自分で一人でやろうと思っていたので、ファッションの専門学校に行き、その後、理学療法士と作業療法士の資格をとって、一回全部自分で学ばなければならない!と思っていたんです。でも、それが出来る仲間を先に集めるということを決めて、一人目はファッションのデザインが出来る人、2人目は医療従事者、3人目は鍼灸師で人とのコミュニケーションがとても得意な人、、、のように自分ができないことを出来る人を仲間にいれていく、というように考えていたらいつの間にかこんなチームになりました。

小栁(G.F.G.S.): そうやって共感して下さる仲間がいるって、すごくいいよね。「似てるなー」と思ったのが、僕もファッションの「ファ」の字もないところからスタートしているという点。専門の学校にも行ってないし。今は、工場になっていますが、、当初、編み機を導入したときには、誰も使える人がいなかったという衝撃的な話もあります(笑)。

落ち着いた雰囲気の田中さんだけど、熱いものがあって、気持ちのほうが先にたって行動した結果が今のように見えます。実際、僕もどちらかというと、気持ちのほうが先に立って、「どうしてもこういうものが作りたいんだ」という気持ちから始まって、あとから習得していく流れでした。

ファッションを勉強してなかったからこそ、SOLITのような服が出来たり、僕たちのような仕組みがつくれたのかなと思っている。よく10代や20代の方たちの前で話す機会をいただくのですが、、あまりそんなに早くから好きなことが見つからなくても、思い立ったときに始めればいいのではないか、とも思っています。田中さんのように、思い立ったらスタートして、時間がもったいないと思ったら、仲間が集ってきて・・・こんな流れもすごくいいなと思う。うらやましい。

※SOLITのチーム

ファッション関係者や医療・福祉従事者、クリエイターやPR・マーケティング領域の専門家まで、 多種多様な分野に属するプロフェッショナルが、「All inclusive経済圏」という構想に共感し、所属や属性を乗り越えたひとつのチームになりました。それぞれが異なる分野で活動するプロフェッショナルの集団です。

ーこの商店街の環境だからスピーディに対応できる。

田中(SOLIT): 私は作る瞬間を見れないからとても悔しいなと思うことがたくさんあります。ちょっと修正したいだけなのに、一度、中国の工場にお願いしないといけないんです。工場の方が私達に気を遣って伝えていないけど実は苦しいとか、離れていることによって、伝えにくいと言うこともあるかもしれないと思っています。だから、工場が側にあって、そこでデザインも考えて、チームもそこにあるという状態を作れているのが、すごくうらやましいです。

小栁(G.F.G.S.): そこは自分たちの強みであると認識しています。地場産業が衰退しているとはいえ、服を作る環境が整っているので、そんな方々と協業しながらやれているので、割とスピーディに対応できます。すぐに修正したい箇所に対応できるのはこの街にいるからだと思う。

小栁(G.F.G.S.): 田中さんの今の活動を知ったら、「一緒にやろうよ!」と共感してくれる人はいそうな気がしますけどね。これだけの人脈・人とのつながりがあって、せっかく新潟にも来てくれたわけですし、またコロナが落ち着いたらまた新潟にも来れるし、僕ともこうやってオンラインだけど、初めてお話させていただいて、繋がることができた。そうなると、田中さんがすごくいいことしてるなと思う訳なんです。僕たちに手伝えることはないかなとか、ここだったらやってくれるよということはやれそうな気がしますね。

田中(SOLIT): ありがとうございます。もっと力をつけて、そして再び新潟に来れるようにがんばります。

小栁(G.F.G.S.): いっしょにサーフィンできるといいですね!

G.F.G.S.代表 小栁 雄一郎さんについて

新潟県加茂市生まれ。G.F.G.S.代表。2013年、ファクトリーブランドG.F.G.S.を創業。以来、協業の職人さんと共に商店街生産といえるほどの距離間で完全受注生産を行っている。新潟県加茂市の商店街に製造現場兼店舗を構えるG.F.G.S.は自分好みのボーダーシャツを作ることができるORDER BORDER(オーダーボーダー)を軸に、様々なブランドやクリエイターとのコラボレーションアイテムを展開している。
また、自社独自のカルチャー雑誌の発行や、音楽レーベルの展開を行うほか、2021年4月からはテイクアウトカフェを併設する土産物センター、BBC Kamo Miyagemono Centerの運営母体となり、商店街をカルチャーの発信拠点として位置付け精力的な活動も開始している。

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イベント開催場所のMOYORe:について

JR新潟駅直結の商業施設「CoCoLo 南館」1Fにあるみんなの駅の交流拠点。「あそぶ・まなぶ・はたらく・つどう」といった活動ができるようになっています。
レンタルスペース、ワークラウンジ、コーヒースタンドを併設したシェアスペースです。
2020年9月OPENし、新潟だけでなく、全国のいろんな方と一緒にイベントを開催しているそうです。
駅を通過する場所から集う場所へと、駅を舞台に、地域で活動する方たちの拠点となり、おもいや価値観で繋がる新しい地域のとの縁をつなぎ、
MOYO Re:は、海と大地がもたらす豊かな食文化と、職人の手で受け継がれたものづくり文化のある新潟で、地域の皆さまの新たな発見や出会いの拠点となることを目指しています。

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